Short Story

□1992*4##111
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あぁ、暇だ。わざと溜め息を吐いてみても、ただ虚しくなるだけだった。

機材トラブルで収録が予定よりも遅れる事になったから、収録までの待機時間が延びた。それ自体は仕方ない事だ。そういう事は時々起こるし、それくらいで怒る程大人気ないわけでもないし、この仕事に対しての理解度が低いわけでもない。

でも、何の因果かは知らないけど、今日に限ってゲーム機の充電が無い。ちゃんと充電してくればよかった。
スタッフさんが用意してくれた他のメンバーが載っている雑誌を見たりもしたけど、もう全部見てしまった。つまり、暇を潰すものが無い状況なわけで。ひたすら暇なのだ。

ちなみに他のメンバーはと言うと、まぁそんなに俺と大差は無い状態だ。
翔ちゃんは新聞を読んでいる(ちなみにその新聞を読むのは俺が知る限り3回目だ)。
相葉さんは暇だと言いながら椅子を揺らして遊んでいる(凄くうるさい)。
潤くんは静かに本を読んでいる(おそらく今この中で唯一退屈を感じていないだろう)。
大野さんは俺の隣で横になっている(というかだらしなく口を開けて爆睡している)。


暇を持て余して翔ちゃんに視線を向けると、ちょうど新聞から目を離した翔ちゃんと目が合った。少し困ったような表情をしているから、きっと翔ちゃんも暇すぎて退屈しているんだろう。うん、その気持ちは痛い程よく分かるよ。

俺は大野さんを起こさないように音を出さないように注意しながらそっと立ち上がり、翔ちゃんの隣に腰を下ろした。


「翔ちゃん、なんかしようよ」
「いいよ。何する?」
「んー、じゃあしりとりしよ」


我ながら暇だからといってしりとりをやろうなんて子供みたいな提案だと思うけど、翔ちゃんは笑顔で、やろっか、と言ってくれた。文句の一つくらい言ってもいいのに、翔ちゃんのそういう優しい所がいいと思う。


「じゃあ俺からでいい?」
「うん。翔ちゃんからどうぞ」
「ではでは、“しりとり”」
「“りんご”」
「“胡麻”」
「ん〜“マラカス”」
「“好き”」


……ん?今、なんて言った?
戸惑う俺を見て、翔ちゃんがにやっと笑う。


「ははっ、この間の『しりとりで告白する作戦』やってみた」


あぁそういう事か、とようやく納得した。
以前、女優さん相手に仮想デートをしてみよう、みたいな企画があって、そこで翔ちゃんがやっていた変な作戦を実践してみたってわけだ。別に俺相手にしなくてもいいのに。

 
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