Short Story

□竹馬の友
1ページ/4ページ


ねぇねぇ、と隣から騒がしそうな声がする。反応したらめんどくさそうなので無視を決め込む。こういう場合、どうせくだらない事しか言わないだろうから、放っておいても問題は無い。
そう思っていたのに、隣から何度も人の名前を呼ぶうるさい声に気が削がれていく。反応しても反応しなくてもめんどくさいとは何事だ。


「ニノちゃーん!無視しないでー!」


たまにこの人が俺の名前をちゃん付けで呼ぶのは何なんだろうか。多分、特に深い意味は無いに違いない。


「……いい加減、うるさいです」
「ひどっ!ニノが無視するからでしょ!」


傷付いたように顔を両手で覆う。いや、口元笑っているの隠せてないから。


「……一体何なんですか」
「ニノちゃんさ、最近あんまり食べてないでしょ?」


一応俺に質問している風に見せかけているけど、明らかに決め付け口調だ。確信持って聞いてきている。もう少しオブラートに包んで言う事は出来ないのかと心底呆れるけど、この人には無理かと諦める。


「急になんなの」
「だって、ニノ痩せたから」
「……別に痩せちゃいないですよ」
「いや、痩せたよ!」


直感で話をするのはやめてもらいたい。こっちの頭が痛くなる。とは言え、もう18年程一緒にいれば、悲しいかな、それにもとっくに慣れてしまっているわけで。いつもの事だ、くらいにしか思わない。慣れって恐ろしい。


「痩せてないって言ってんでしょ」


多分、こう言っても納得してくれないんだろうけど。なんか知らないけど、この人は自分の直感をすげぇ信じてるから。
まぁ正直に言うと、確かに少しは痩せたんだけどさ。別に食べてないわけでもないし、そんなに気にする程でもないけど。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ