Short Story

□switch on
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生放送を終えて楽屋に戻ると、自然と溜め息が零れた。別に疲れたわけではなく、それ自体に大した意味は無かった。
だけど、俺と並んで楽屋に入った大野さんは俺が疲れたのかと思ったらしく、じーっと俺の顔を覗き込んでいる。そんなに見られたら若干恥ずかしい。
このままの状態でいるのはさすがに耐えられないので、俺も大野さんに視線を向けてやる。すると、大野さんは俺の頭に手を乗せた。


「疲れた?」


穏やかな瞳の奥に隠された心配の色。
この人は意外と心配性だと思う。
心配されるのはあまり好きではないけど、この人からのそれは何故か心地よい。


「いえ。楽しかったですよ」


本心を伝えると、安心したように笑う。
それから、椅子に座った俺のすぐ隣の椅子に腰を下ろした。肘と肘とがぶつかるくらいの距離だ。


「楽しかったなぁ」
「あいつらと一緒だとノリが深夜番組っぽくなりますよね」
「そこがいいよな」


ああいうノリがいいと思う。普通に楽しかったから。きっと俺達の楽しさが画面を通して視聴者にも伝わっているだろう。


「それにしても、あれはもう二度とやりたくねぇ」
「あれって、腕力バイキング?」
「そう」


やった時の事を思い出しているのか、眉間に皺が寄っている。
あれは確かにキツそうだった。俺なら絶対無理だ。


「でも、あなた凄かったじゃない。早かったよ」


意外と筋肉質で運動神経の良い大野さんは身体を使う競技に滅法強い。
普段はのんびりしてるくせに、ああいう時は一瞬にして男らしくなるんだからこの人は凄い。

 
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