Short Story

□君が笑えるように
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おれの苦手なもの。それは、涙。
別に泣かれる事自体は苦手じゃないけど、普段泣かない奴に泣かれるのは凄く苦手。
特に、その相手が自分の気持ちを押し込めてしまうような優しい奴の場合は。

何でそんなに辛い思いすんの、って、もっと気楽でもいいんじゃないの、って言いたくなる。
気にしてなさそうな奴ほど、そういう辛さを抱えてしまいがちなんじゃないかって思う。


例えば、おれの隣でゲームをしている男。
嵐の中ではツッコミ担当で(たまにボケたりもするけど)、メンバーやゲストへの鋭いツッコミが凄くて。
場の雰囲気が悪くなるとわざと軽い口調で喋って、気付いたら雰囲気がよくなっている事も多くて。
他人とは違う視点を持っていて、話を面白い方向に持っていくのがめっぽう上手くて。

そして、何かと勘違いされる事が多い。
生意気だの、冷めてるだの、悪いイメージを持たれやすい。


本当は凄く優しい奴なんだ。
実は感動ものにめちゃくちゃ弱くて。メンバー想いで。バカみたいにいい奴で。
勘違いされても、酷い事を言われても、『分かってくれてる人がいればいい』なんて言って。

本当は傷付きやすいくせに。
本当は繊細なくせに。
本当は泣き虫なくせに。


「バカだよなぁ……」


呟くと、ん?っておれを見上げる瞳。いつも潤んでいる瞳は同性とは思えないくらい可愛い。


「お前、バカだよなぁ」


誰の前でも泣かない。弱音を吐かない。
それは強さかもしれないけど、もっと頼ったっていいと思うんだ。


「せめておれにはさぁ、頼ってくれよ。絶対に、守るから」


急になんなの、って不思議そうにおれを見ている。何を考えているのかを必死に探ってる。
いくらお前でも分からないと思うよ。お前が思ってる以上に、おれはお前の事考えてるって事。


「……俺は無敵なんですよ。
嵐に……あなたの隣に、いられるならね」


泣きたくなるくらい綺麗な顔で、ずっと聞いていたいくらい温かい声で、涙で光る目におれを映している。
あれ、もしかして分かっちゃったのかなぁ、おれの考え。やっぱりお前は凄い奴だ。


どうやらおれが苦手なのは、涙じゃなくて。
お前を傷付ける全てのもの、らしい。



((大好きな君の笑顔を守りたい。))



End.  

 
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