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□エゴイスト*
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“あの子が好きみたいだ”
あの時言った君の言葉は、今でも僕の頭にこびりついている。まるでフライパンにこびりついて取れない真っ黒な汚れのように。
「...え?」
「...だから、彼女ができたんだ」
突然のジスの告白は受け入れ難いものだった。突然巻き起こった心のざわめきに対して、僕ができたのはただ笑って誤魔化すことだけだった。
「なんだ、お前も質が悪いな、僕に隠れて恋愛するなんて。告白はどっちから?」
「...あの子が、好きみたいだ」
それは不思議な響きを持つ言葉だった。「あの子」が、ジスを好きなのか。ジスが「あの子」のことを好きなのか。曖昧な響きを持つ言葉は僕の頭の中を一周したあと、ようやくひとつの答えにたどり着いた。どうやら僕の心臓に棘、いや刃物が刺さったらしい、ということ。