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□ふたつだけ*
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僕には兄さんが一人いる。二つ年上の兄さんの名前はハギョン。僕は物心ついた時から兄さんが大好きだった。僕の手を引いて人混みをかき分けてくれる兄さん。転んで膝をすりむいたときには優しく「痛くない痛くない」と頭を撫でてくれる兄さん。夜寝付けないときは一緒に布団に入ってくれて僕が眠るまで子守唄を歌ってくれる兄さん。そして、僕は大好きな兄さんと血が繋がっていないことも知っている。


小学校を卒業する頃、寝付けなかった僕はリビングで何やら話しこんでいる両親の会話を偶然聞いた。僕の本当の両親は僕が2歳の時に交通事故で亡くなったと。だから、僕が物心がついた頃にはいつも隣に兄さんがいたんだと知った。

僕は目が腫れるまで部屋で引きこもって泣いた。声には出さないで。物音で気づいたのか、そんな僕を兄さんがそばにやってきた兄さんが理由も聞かないでそっと抱きしめてくれた。兄ちゃんがいるからもう泣かないで、大丈夫だよ、そう優しい声で言って。その時から兄さんは僕の世界の中心になった。

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