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□甘ったるい夕暮れ
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「エロすぎる」



ケーキをほおばりながらソンジェが唐突に発した言葉。



「は?」
「サビの振りだよ。あんなみんなの前で腰振っちゃってさ〜…だれかがヒョンのことエッチな目で見始めたらどうするの」



そして、あ、もちろん僕以外でね、と付け加えた。口にはケーキのかすがついたままだ。
僕が手で拭ってやろうとすると、かぷっと指をくわえるふりをする。
なんかおもしろいからそのままでいっか。


僕達は殺人的に忙しいスケジュールを縫って久しぶりにカフェで二人だけの逢瀬を楽しんでいた。
日が暮れた店にはぽつりぽつりと客がいるだけ。


で、その問題の振りというのも、新曲のウェーブダンスのことだ。僕らのグループにとっては初めてと言っていいぐらいのセクシーダンスで、ファンからはとても評判がいい。だけど僕の恋人は不服みたいだ。



「ヒョンがほかの人と浮気するとか疑ってるわけじゃないよ?でもあまりにエロすぎるから...それに、こないだのドラマでのオレンジキャラメルのやつ、かわいすぎるし」



ヒョンがだれかに襲われないか本当に心配、そう言って切れ長の目を伏せる表情は僕より五つ年下とは思えないほど大人びている。だってケーキのかすが顔についててもこんなに男前なんだから。

そんなソンジェの顔に見とれて僕はしばらく何も言えないでいた。



「そういうお前だって女装よくしてんじゃんか...」



なんだか嫉妬してるみたいで恥ずかしくて、言いながら照れ隠しにコーヒーに手を伸ばすと、僕はいいの、だってヒョンにしか欲情しないから、なんてまた意味不明なことを言ってケタケタ笑い出すソンジェ。
本当にコロコロ変わる表情には飽きさせられない。



「ていうかさ、あの振り、立ちバックにしか見えないんだけど」



突然声を大きくしたと思ったら突拍子のないことを言い出すソンジェ。



「バッおま、もうちょっとボリューム...!」



そのソンジェの口を慌てて手で押さえる。おかげで人が少ない店中にソンジェの声が響き渡ってしまった。
あたふたして周りをきょろきょろ見渡す僕とは正反対に、慌てる僕の顔がおかしいと言ってまたケタケタ笑い出すソンジェ。



しばらくソンジェはそのままにやついていたが、突然なにかをひらめいた顔になってニッと口角を上げ、僕に近づいて耳元で囁いた。





「ね、ヒョン、今日は立ちバックでシよ」


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