infinite

□アイツ
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恋人だったアイツは、黒が好きだった。



夏だろうが冬だろうが季節なんてお構いなく、一年中真っ黒な服を着ていた。
おまけに髪の毛も真っ黒。この年頃だったらちょっと明るくするとか、パーマをかけて遊んでみるとか、してもいいのにアイツは頑固だった。根暗に見えるからせっかくのイケメンなのにもったいないよなんていつもよく言っていたっけ。そう言うと決まってくしゃっとしたあの笑顔で返されたのも鮮明に覚えている。 髪を長めにするのはソンヨラとお揃いがいいから、そんなようなことも言っていた気がする。



交友関係が広く、友人が多い僕とは違って物静かで周りとは一線を画していたようなアイツ。だからと言って近づき難いわけではなく、むしろミステリアスな雰囲気はみんなの羨望の的だった。
仲良くなるとベタベタくっついてきて意外にかわいいところもあったりして。どこへ行くにもソンヨラと一緒がいい、なんてことをさらっと言ってのける。スキンシップもやたらと多くてこっちがドギマギしてしまったり。それでも真顔になって切れ長の涼しい目で僕を見つめて好きだよなんて言われたら僕には拒否する理由もなく、そうやって僕たちは恋人になった。




僕は優越感に浸っていたのかもしれない。アイツには自分だけだと。アイツが僕から離れるなんて、僕以上に必要とする人が現れるなんて。

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