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□猫
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その日は雨が降っていた。
それは学校からの帰り道、空模様に染まってしまったかのように僕の気持ちにはもやがかかっていた。
突如として目の前に現れた人。
昔からよく知っている人。
彼は雲間に差した光のようだった。
ずぶ濡れの子猫を抱き上げてその広い胸に収める。
体を震わせながらもうれしそうにすりよって鳴く猫。
その猫を見つめる優しい眼差し。
ああ、僕もあの胸にすっぽり収まったらいいなあなんて。
その眼差しで僕だけを見つめてくれたら、なんて。
なにもかも彼の全てを独り占めできたら。
生まれて初めて芽生えた感情。