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□エゴイスト*
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「いた...っ」
課題のレポートをまとめるのに失敗したホチキスを引き抜こうとすると指に深く刺さって思わず声が漏れる。指を見てみると、あんなに深く刺さったのに血すら出ないことが逆に皮肉で、自分がなおさら惨めになるような気がした。
それがなんだか悔しくて、目の前にあった自分の腕に思いっきり歯を立ててみた。まだ血は流れない。期待した赤い液体の代わりに、腕の上に流れていくのは透明な塩気のある液体だけだった。
血よりも涙のほうが簡単に流れる。それを、僕は生まれて初めて知った。自分がこんなに感情をコントロールできない人間だったなんて。見えない心の傷を体現するように、僕はただ涙を流し続けていた。