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□Birth
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今日は七夕。でも、今年は逢えねぇなぁ織姫と彦星。天から降る雫のせいで。
Birth
夕方。七夕祝いとかで宴会を開いてどんちゃん騒ぎ。近藤や原田などが飲み散らかすところで一人、沖田は気が乗らなかった。当然その場に土方も居たが。
なんとなく騒ぐ気になれず、自室で鬼嫁を片手に一人、酒盛りをしている。
あの男は明日何があるか気付いているのだろうか。俺がまた一つ成長する日だってのに。
確か、かなり以前に何がほしいか聞かれた覚えがあるが、その時は高級苺大福とかそんな物を答えた気がする。
もちろん彼奴なら用意している筈だが、前夜になっても、俺が一人で居るのにもかかわらず部屋にも来ないとは早く殺されたいのかねぃ?
もう十一を指している。薄明かりの中秒針は刻一刻と進む。
酔いもできず、ただ飲み続ける。
すると、押し入れからガタガタと明らかに鼠や虫でない大きさの物音。
…何…?
思い切り戸を開くと、
そこに現れたのは………………………
体育座りの土方。
「…あんた何してんの。」
「いや違うんだ、これは、ひ、避難訓練の練習をしていてだな」
「……………………………ぶふっ」
思わず吹き出してしまった。
「笑うなよ!」
「いや避難訓練て…避難訓練は無いでさぁ。アホにも程があらぁ。」
「うっせェ!避難訓練はな、いざというときに…」
「はいはい。そんなとこから登場してかっこつくと思ったんですかぃ」
「他に入れるスペースが何処にも無かったんだよ!」
「馬鹿だなぁ」
「んだとテメェ」
「それと、なんでそこにいたんで?」
土方は確かに宴会にいたはずだ。いつの間にスタンバっていたんだろう。
「それは…お前が部屋戻るとか言うから、急いで隠れたんだよ。」
「え…まじですか」
「あぁ。でも、いつ出れば良いのかわからなくて…」
「本当に馬鹿ですねぃ」
「うっせぇな
…おら、これやる。」
ぶっきらぼうに投げ渡された紙袋には俺が頼んだ苺大福。こういうところ、本当に律儀だなぁ。
「それと…これ。」
「?」
手渡しされたチケットの形状のものは、まさしくチケットだった。遊園地の。
「これはどういう意味で?」
「明日、有給とったから、行くぞ」
「仕事は?」
「どうにかなる」
「…ふーん」
「…行きたくないか?」
「土方さんと二人かぁー」
「…行きたくないなら別に「仕方ないから行ってあげまさぁ(即答)」
思わず食い気味に行ってしまった。やっべ、嬉しいってのがバレる!
「……」
「なんでぃ」
「お前って本当、天邪鬼だな」
「素直でぃ」
「ふっ天邪鬼じゃねえか。まぁそういう総悟が好きだけど」
「!!」
「誕生日おめでと、総悟。」
俺が直後、赤面したのは言うまでもないが…、
アイツは…何回恥ずかしいことを言えば気が済むんでぇ!
土方死ね!!!!
俺は、また一つ、大人になった。
End*