Dream novel

□貴女だけの秘密の薬
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貴女がどんな病にかかっても








それを治せるのは私しかいないでしょう











「クシュンッ!あー、寒っ」

「卍解を修得する為とはいえ、雨の中やるからですよ」

「だって…少しでも卯ノ花隊長に近付きたくて…クシュンッ!」

「だとしても、風邪を引いては意味がないでしょう?」




飛鳥は四番隊第五席


五席ですが、それ以上の実力を持っています



ですから、本当なら三席でもおかしくはないのですが飛鳥本人は





「まだまだそんな力はないです!」





の一点張りで全く話になりませんでした。



一体、何の為に彼女はそんなに力を求めているのか…




その為にとはいえ、体調を崩しては意味がありません。




「飛鳥、力を求めるのが悪いとは言いませんが…四番隊士たるもの自分の自己管理が出来ない様では鍛錬をさせる訳にはいきません」




少し厳しい言葉でしょう




でも、今の飛鳥にはそれくらい言わないと
わかってもらえないと思ったからです




「ごめんなさい…。”今日は大人しくしてます”」




飛鳥は布団を頭まで被ってうずくまってしまいました




「また後で顔を出しますから、ちゃんと食べて薬飲んで下さいね」



その言葉に返事はなく、私はその場を後に

隊舎へ戻って行く




戻った所で飛鳥の事が気になって溜め息ばかりついてしまう




「隊長?大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ、勇音」




勇音にまで心配をかけさせてしまうとは…



隊長の二字が泣きますね



「あ、そうだ。飛鳥ちゃんどうでした?」

「やはり風邪を引いていました。薬は置いて来ましたが…あの子の事です。







飲まないでしょう」




自分で言ってなんですが

不覚にも笑ってしまいました。




それは勇音も同じ様で二人で笑いあっていた




「隊長、今日はもう上がって下さい。
これ飛鳥ちゃんに」



差し出されたのは果物が入った籠



「いえ、私も仕事を…「これくらいさせて下さい」







あぁ、なんと頼もしい副隊長なのでしょうか


あんなに気の弱かった子が



数年で此処まで頼もしくなるとは



烈は勇音の言葉に甘え、籠を手に飛鳥の自室へと足を運んだ
「飛鳥、ちゃんと薬は飲みました…か」



飛鳥見ると息を乱し身体全体から吹き出す様な汗が流れていて

頬に触れると高熱を出していた



直ぐに額に濡れタオルを乗せ

汗を拭き取り濡れた服を取り替え

薬を飲ませると徐々に落ち着きを取り戻した




「んっ…あれ…卯ノ花隊長…?」

「気が付きましたか?」

「…身体…重たっ…」

「熱が引いたばかりですから安静にして下さい。全く、あれ程薬を飲んで下さいと言ったのに無視しましたね」

「…ごめんなさい」

「勇音が貴女にと果物をくれましたよ」

「勇音さんが…。優しいな…勇音さん」

「何か食べた方が良いですね。今、切ってくるので大人しくして下さいよ?」



烈が立ち上がり台所へ向おうとすると

飛鳥は鼻にかかった声で小さく呟いた



「いらない…」

「はい?」

「食欲ないから…いらない」




烈はその言葉を耳にするも聞こえてないフリをしながら果物を切っていく




「食べて下さい。起きれますか?」




身体を起こそうと手をかけると身体を逸らして抵抗する




「飛鳥、怒りますよ?」

「もう…怒ってるじゃないですか…」

「食べないと治るものも治りませんよ」

「でも…今は何も食べたく…んっ!」




話しても聞く様な子ではない


そんな事は百も承知


だから、行動に移しました




飛鳥の口にオレンジを突っ込んでも






きっと吐き出すに違いありません



だから、その上から自身の唇を重ねた





「んっ!はぁ…あっ」



飛鳥の口許から溢れ出す果汁


頬に伝う果汁を舌で舐め取り


そのまま飛鳥の唇へと運び


口付けを交わす




「ふぁ…んっ…卯ノ花隊長…」

「”卯ノ花隊長”ではなく”烈”と呼んで下さい」

「れ…烈さん…風邪…うつっちゃう…よぉ」

「私はそこまで身体は弱くありませんよ」

「烈さん…」

「なんですか?」

「まだ…食べたい…」
その顔はまるで子供の様



さっきは食欲がないと言ったではありませんか





「全く…我儘ですね」

「…違うもん…烈さんのせいだもん…」




あらあら、私のせいと?







言い返したい所ですが…








今日はその可愛さに免じて許しましょう










貴女を治せるのは私だけ






どんな薬よりも私は効くのですよ







余談





「クシュンッ!」

「風邪ですか?隊長」

「変ですね。私が風邪を引くなど…クシュン!」

「うわっ!熱あるじゃないですか!
今日は休んだ方が良いですよ!」




(絶対…あの時だわ…)




烈は一人、飛鳥に口付けをした事を




深く深く後悔するのであった








でも、ちょっと微笑んでいたというのは皆には内緒ですよ?
 

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