喰
□見。
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「トーカちゃん、」
カナメはせっせと仕事をしていた少女に声を掛けた。その腕には包帯が巻いてあり、まだ傷が完治していないことをありありと主張していた。
人知れず顔をしかめたカナメに気付き、トーカは漸く振り返った。
「カナメさん…?」
心配そうに紡がれたそれに、カナメは胸がきゅう、と締め付けられる感覚に襲われた。
「昨日はゴメン。俺の我が儘でトーカちゃんに怪我させて…クインケで付けられた傷はすぐには治らないから…それに、」
そこまで言ってカナメは口をつぐんだ。
トーカが笑顔で首を横に振っていたからだ。
「いえ、白鳩に手を出してしまった私の自業自得です。それに、あの時カナメさんが来てくれてなかったら、もっと傷は深かったでしょうし。
私を蹴ったのも、あいつらに私とカナメさんは無関係だって言いたかったんですよね。」
違っていたら恥ずかしいですけど、とトーカが恥ずかしそうに俯くのを見て、カナメは泣きそうな声で言った。
「ありがと、俺…ちゃんと皆の役に立てるように頑張るから…」
カナメはそれだけ言うと半ば逃げるようにして店を後にした。
向かうのは、帰るべき家。ウタの待つ家。久しぶりの其処に、カナメは頬が緩むのを感じた。