□見。
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「そう言えばさ。」


一通りじゃれあい四方の腹の上に乗っかった体勢のまま、ふと思い出してカナメは四方の髪を引っ張っていた手を止めた。
先日のトーカの怪我のことを思い出したのだ。きっと白鳩に手を出した事について何か言われるに違いない、カナメは眉を寄せて掴んでいた四方の髪を撫でながら俯く。

「トーカちゃんのこと、怒らないであげてね。責めるなら、俺が一緒の時にして。」

「それは…」

何か言おうとした四方の唇に人差し指を当てて制止した。カナメは続ける。

「ていうかさ、俺のが最低なの。…トーカちゃん使って白鳩見付けさせてさ、助けるフリして俺がしたいことしかしてないんだよ。」

自嘲気味に唇を歪めてカナメはようやく四方に顔を向けた。

「…俺は、カナメのしたいようにすればいい、昔からそう言っているだろう。無茶をしなければそれでいい。」

腹の上に乗ったままのカナメの首根っこをむんずと掴んで起き上がる。その間はカナメは大人しくされるがままになっていた。

「仕事の時間になった。俺は出掛けるが…お前はどうする。」

四方に言われ時計をちらりと見ると、時計の針はおやつの時間帯を示していた。
カナメは暫し考えた後、芳村へも話をしなくてはならないことを考えて一つ頷いた。

「俺は店に顔出してくる。店長と話したいし、トーカちゃんにも謝りたいから。」


「…そうか。」


カナメの返事を聞くなり四方は扉の向こうに消えていった。

よいしょ、という掛け声と共にソファから離れると、カナメも後を追うように家を後にした。


「(店に行って、話して、その後一回ウタさんとこ帰ろうかな。荷物も置きたいし…)」


これからの事を考えながら、カナメはのんびりと歩き出した。



 
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