□動。
4ページ/4ページ



口元にこびりついた血液を拭いふいと顔を上げたカナメは、満足げに微笑みながら捜査官の持っていたクインケの入っているケースを大事そうに抱えた。

「後で、僕の部屋のお友達の所に帰してあげるね。辛かったね、お疲れさま。」

労るようにケースを撫でながらも、「あんていく」に向かうべく立ち上がった。
カナメの部屋には、捜査官から奪ったクインケがケースごと並べ置かれていた。クインケの材料を知っているカナメは、今まで仲間を狩るためだけに使われた喰種達の魂を弔うかのようにそうして集めては声を掛け、二度と狩らなくてもいいようにと、部屋に並べていたのだ。

「早く、母さん達のも…。」

未だに両親の赫包を使ったクインケは見付かっていない。双眸を細めて、小さく呻きながらも直ぐに立ち上がる。
さっき食べた白鳩の部下だが上司だかがこちらへ向かっている足音が聞こえた。血黙りも最小限、捜査官にやられた喰種も食べた、そしてここはまだ20区ではない。恐らくこの区の喰種の仕業だと勝手に判断するだろう。カナメにとっては、20区と4区、14区、それぞれのただ一部にさえ危険が及ばなければどうでも良いのだ。

「店に行く前に、蓮示に会いに行こう…。」

ケースを抱えたまま、またビルの屋上を伝って行った。食べたばかりだが、体は不思議と重たくは無かった。

興奮していて普通の瞳に戻るのは些か遅くはあったが、知り合いの家に着くまでには問題は無かった。


 
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ