ハイキュー中編2

□ゲームオーバーから始まる
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なんであんなに楽しかったのか。なんで彼にはなんでも話せたのか。

彼とキスをしたのはきっと、私の意地。麻痺していた。錯覚していた。私と彼は、恋人同士だ、と。

でも違うんだと。思い知った。彼は私の嘘の恋人。だから。だから彼は、私がキスしたことに、怒ったんだと。私は今さら、気づいた。

「なんでこんなことになっちゃったかな」

決意を新たに。彼の部活帰りを待つ。

"話したいことがあるから、校門で待ってる"

一言、そうメールして。

日が暮れ辺りが仄暗くなった頃、黒尾くんから電話がかかってきた。

『ユリ、部室棟わかるか?体育館の脇の――』

事細かに説明する彼の声を耳に焼き付ける。この優しい声も、関係も、今からあって、私が壊すものだから。

「うん、うん。わかった。今行く」

電話を切り、おぼつかない足で歩き出す。案外簡単に見つかった部室棟。バレー部とかかれたドアの前に、黒尾くんがいた。

彼は私を確認すると、部室に入っていく。私もそれに続き、部室に入った。

男臭いと言うか汗くさいと言うか。独特の空間で私と彼は対面する。彼は笑っていなかった。きっと彼はわかってる。

「黒尾くん」

「おう、」

「ごめん、私たち、もう終わりだね」

見上げた彼と視線がかち合う。もう、我慢できなかった。涙が目に膜を作り、頬を伝って流れ落ちる。

「ユリ、ちゃんと言わなきゃわかんねぇ」

彼はなおも真剣な眼差しで私を見る。バカ。どこまで意地悪なんだよ。

私は俯きはっきりと言葉を紡ぐ。

「私は、あんたに惚れたから。あなたが好きだから。だから、」

彼を見上げたら、彼は手で顔を覆ってため息をはいた。

「はー、やっとかよ」

「?」

訳がわからず固まっていたら、彼は私を抱き寄せた。私は彼を見上げ、声にならない声で問う。どういうこと、と。

彼は私を見下ろし、いつもの笑みを見せてくれた。

「惚れたらリセットっていったよな?」

「うん、だから、お別れ……」

「バカだな、お前」

言うと彼は私の唇を塞いだ。驚き彼を凝視したら、彼は私の頭を撫でた。

「リセットしたから、今度はほんとの恋人な」

訳がわからずあたふたしてたら、彼はぎゅっと私を抱き締め優しく、少し意地悪い声でいった。

「このゲームは、お前が俺に惚れた時点でゲームオーバーで、スタートなんだよ」

彼を見上げたらニッと笑っていて。それって、彼にはめられたってこと?黒尾くんは

「ま、ついでに言うと、ゲームが始まった時点でゲームオーバーだったんだけどな」

それはつまり、私の自惚れじゃなければ。

「初めてあったときから。お前に惚れてた」

はにかむように笑う彼を、思いっきり抱き返した。

結局のところ、彼は私が好きだった。だけど鈍い私は彼の気持ちも自分の気持ちも気づかなかった。故の、恋人ゲームの提案。

そして私は思惑通り、彼への気持ちに気づいたわけで。

「黒尾くんは。ほんと、素直じゃ、ないんだからっ」

笑いながら、涙がこぼれて。私たちは漸く嘘の恋人から"本当の恋人"へと発展した。

「ユリ、好きだぜ? もう離さないからな?」

誰もいない部室で、私たちは愛をちかいあった。少し苦い、私と彼の馴れ初めのお話。





FIN
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ご愛読ありがとうございました!!



140917
 

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