ハイキュー中編2

□嘘デート
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久々のオフだから今度の日曜は空けておけ。

若干脅迫気味のそれに、私は従う他なかった。だけど、少なからず楽しみにしている自分もいた。
例えそれが

嘘のデート。

だとしても。




「ほー? へー?」

にやにやと、私を上からしたまで見る黒尾くん。なんだよ、私だって、おしゃれ位するよ。

「変ですかね?」

「いやー、女にしか見えないわ」

「いや、女装じゃないし! 私女の子だし!」

ムキになって言い返したら、わかってるって返された。

「かわいいぜ?」

にたり、笑う彼に言われ、何だか恥ずかしくなった。別にこんなにお洒落しなくともよかったんじゃないかって。だって私たちは

「じゃ、行くか」

そう言って彼は私の手をとる。驚きその手を振り払ったら、あきれたように笑われた。

「恋人なんだから、手くらい繋ぐだろ?」

ああ。そうだね、と平静を装って、彼に手を伸ばすと、しっかり握られたそれ。何だかはずかしくて、胸がドキドキしたのは気のせいだと言い聞かせ、私は彼に連れられて歩く。


行き先も聞かぬままついたのは、遊園地で。

「ベタだねー」

って言ったら

「とか言って、こういうの、好きだろ?」

って返された。あながち間違いじゃなかったから、何だか悔しくて、憎まれ口を叩いた。

「まあ、高校生とのデートじゃ、こんなもんだよね」

「ほー? 遊園地バカにすんなよ?"大人な"ユリさん?」

彼はなおも楽しげに笑っていた。そのわけを、あとから知ってもすでに遅く。



「あ、のさ、これ、なんメートル、あ、いや、落ちる、いやあぁぁあぁあ!」

絶叫系で有名なここの名物コースターにて。私はさんざん叫び倒し、酔っぱらい、彼に大笑いされることとなった。くそ、こんなの、ずるじゃないか。

「くっははっ、ユリさん、大人のよゆーはどうしました?」

腹を抱えて笑う彼に肘鉄を一発食らわして、とりあえずベンチを探し、私はよろけながらそこに座る。ダメだ、叫びすぎて喉いたい。何かのみたい。てか、足、立たないよ。

「ふっ、ユリもあんな声だすんだな?」

「え?」

「若干エロかったぜ? やめてっ、とか、な?」

言われて私の顔に熱が集まる。言い返そうとしたけれど、あいにくそんな気力もなくて。

「ちょい待ってろよ?」

彼は私を見かねてどこかへ消えていく。次に帰ってきたときは、両手に飲み物を持っていた。

「ほら、飲めよ? 喉ガラガラだろ?」

渡されたそれから延びるストローをくわえ、飲料を喉に流す。叫びつかれた喉が癒えていくのがわかった。

そんな私を、彼は楽しそうに見ていたことに、私は気づかない。




何だかんだ、夕刻まで遊園地を堪能する私。そしてそれを見る彼は。

どんな気持ちでこの時を過ごしていたのかと。今となっては確かめる術はないのだけれど

「楽しかったね」

「あー、誰かさんは最初なめてましたけどね?」

「もう、なんで黒尾くんはそんなに意地悪いのかなぁ」

ひとつ、ため息をはく私の頭を、彼は優しく撫でた。

このときはまだ、私は彼との関係も、彼の気持ちも、彼の笑顔も。なにもかも、わかっていなかったのだけれど。



ただ、私の心に変化が芽生え始めたことに。私は勿論、彼も気づかないままに。

私たちはもう暫く嘘の恋人であり続けることとなる。




140917
 

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