ハイキュー中編2

□ゲーム開始
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夏に差し掛かったある日の出来事。

いつも通りバイトを終え、帰路についたそのときだった。

「あ、」

バイト先の常連さん、音駒高校のバレー部の。

「黒尾くん? どしたの?」

偶然にしてはできすぎてるのはわかる。彼は私に用があってきたのだろう。

「如月さんよぉ」

彼はニヤリ、笑い私に詰め寄る。悪い予感がした。彼は読めないタイプの人間で、私のもっとも苦手なタイプ。
そして私は男性恐怖症的な部分もある。まあ、それを知ってるのは黒尾くんくらいなんだけど。

「如月さん、俺と付き合わない?」

目が点、とはこの事だ。全くもって、彼の考えが読めない。断ろうと、息を吸った瞬間、彼に言葉を遮られた。

「つっても、表面上、な?」

「なにそれ?」

怪訝な目を向けたら、彼は悪戯っぽく笑う。

「つまり、俺と付き合うフリをしてくれって話」

「なにそれ? なんの意味があるの?」

聞いても彼は私を無視して言葉を続けた。

「まあいいじゃん。お互いフリーなんだし。如月さんの人嫌い、治るかもよ?」

「余計なお世話……」

「怖いの?」

「だ、誰がっ」

キッと彼を睨んだら、彼は勝ち誇ったように笑っていた。

「じゃあ決まりだな、"ユリ"」

「っ、!」

名前で呼ばれた。ただそれだけなのに私の顔に熱が集まる。やだなあ、年下になめられたくない。てか、

「わた、私はそんなの知らないからっ」

「まー、いいよべつに。俺が勝手にユリのこと彼女にするから」

なおも笑う彼にあきれてため息をはく。はじめてあった日から、彼はなにかと私を構う。
たぶん、私はからかい甲斐のある人間なのは自覚していたけど。高校生にまでバカにされるとか。もう、情けないやら悔しいやら。
大きくため息を吐き、彼を見たら。彼は最後に一言、こう付け加えた。

「ただし、互いが互いに惚れたりしたら、この関係はリセットな?だからユリ、」

――俺に惚れるなよ?

ちゅ、と額にキスをされ、彼に言われた言葉に対し。私はベーっと舌を出して思いっきり彼をにらんだ。



私と彼の、不可思議な関係が、始まる。





140917
 

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