ハイキュー中編
□君がすき
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きんにくー、とユリが俺にじゃれつく昼休み。何て言うか。なんかこう、ダメだった。ユリのペースに巻き込まれ、俺はされるがまま。教室の男子の視線がいたい。頼むからじゃれるなよ。子供じゃあるまいし。
「孝ちゃん?」
硬直した俺を見てユリが心配そうに声をかける。くりんと首をかしげるようすは可愛らしくて、正直きつい。
「如月、あんまベタベタするなよ。恥ずかしいべ?」
言ったらユリは、何で?とまた首をかしげる。天然なのだろうか。俺はため息をはいた。
「子供じゃないんだから、」
「だって昔は一緒に遊んだじゃない」
言われて言葉に詰まった。それとこれとは別で。って言ってもきっと納得はしないだろう。どうしたものかと腕を組み考えていたら。
「如月さんって、菅原と知り合いなの?」
数人の男子がユリを取り囲む。下心バレバレで。
そんなこと露知らずの鈍感ユリはにこりと笑い、そうなの、と返事を返す。
「へー。如月さんって、どこから来たの? 好きな食べ物は? 彼氏とかいたの?」
ぐいぐいと質問攻めにされるユリの周りには続々と人が集まる。なんだよ、なんだよなんだよ。
自分でも意外だった。ユリをとられたくない。その一心で俺はユリの手を引き教室をあとにした。
「こ、孝ちゃん? どうしたの?」
ズンズンと無言で歩く。ユリの歩幅なんて気にせずに。小走りなユリなんてお構いなしに。
人気のない廊下まで来て、やっとユリの手を離した。ユリは不思議顔で俺を見ていた。
「私、なにか悪いこと、した?」
おずおずと上目使いで訪ねるユリに、またため息をはいた。
「お前はさぁ。昔から無防備なんだから。少しは警戒を、?」
言葉途中で、ユリが笑ってることに気づき、言葉を止めた。
「心配?」
悪戯っぽく笑うユリ。そりゃ、心配だけど。だけどこいつは
「心配するの、予測済みってことか」
言ったら、正解、とクスクス笑うユリ。全くガキかと頭を抱えた。
「だって孝ちゃんさ」
「?」
「ん、秘密」
ユリが何を言わんとしているのか、俺にはわからなくて。ただ、惚れた弱味ってやつだ。この先やきもきする生活になるのかと思うと、またため息が出た。
好きか嫌いか何てわからなくていい。ただ俺が君を好きでいたいから。
140710