ハイキュー中編

□触れた私と君の体温
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何だかんだ、私は最近菅原くんとの接点が増えた。嬉しいけど、畏れ多くて例のごとく私の日本語は意味不明なままだ。

「如月さ、告白されたことないの?」

下校途中不意に口にする彼。

「え、ええ? なな、なに言うですか?」

あたふたと顔を左右に振り、目を泳がせる。何を言うんですか菅原くん。私なんかが告白されるはずないし、そんな話聞いてどうするんですか?

「あー、そっかそっか」

なんだか安心したように菅原くんは笑った。なんですか、バカにしとるんですか。確かに私はへたれで変人で。でも恋くらいしてますよ。しかもその相手、いま目の前にいるんどすけど。気づかないですか?まあ、気づかれたら問題だけど。

「なに、如月? 俺になにかついてる?」

私の視線に気づき、菅原くんと目があった。慌てて顔を逸らし、私はうつむく。ばか。ばかばか。私のバカ。意気地無し。

「べつになんでもないかもです」

かもってなんだ、と自分で疑問を持った。相変わらず彼の前では意味不明だよなあとため息を吐いた。このまま卒業を迎えて、3年間片想いのままで。そんできっと大人になってもこの初恋を引きずるのかと思うと、ほとほと自分に嫌気が指す。かといって告白なんかした日には、頭爆発して死ぬかもしれない。いや死ぬ。確実に死ぬ。

「おーい、如月?」

「ほぇ?」

変な声をあげて彼に顔を向けたら、なんだよって笑われた。いやいや、不意打ちずるいですよ。私はぷくっと頬を膨らませた。

「なに如月? 考え事?」

聞かれても私は答えなかった。彼はやれやれ、と肩をすくめて話題をそらした。

「俺さー」

「……」

「てかね。友達の話なんだけどさ」

くりん、と彼は私を見て笑った。ドキッと心臓が跳ねる。あまりにもきれいに笑ったから。そしてはじめてみた笑顔。笑顔に種類があるとしたら、それは憧れだとか親愛だとか。そんな類いだと思う。

「前にいったじゃん、"純粋培養のお姫様"。友達がさ、その子のこと、好きなんだよね」

彼は空を見上げて言葉を紡ぐ。あ、嘘だ。彼は嘘をついている。この話は、「トモダチ」じゃなくて。菅原くん自身の話だと思った。何となく、だけど。

「す、好きなら告白すればいいじゃないのです?」

チクリと痛む胸を押さえて、私は言葉を紡いだ。嫌だよ。誰だかわからないその子にあなたをとられたくない。告白すれば、なんて。無責任な言葉を投げつけたのは、きっと、嫉妬からだった。叶ってほしくない、彼の恋。何て私は醜いのだろうか。自分のあざとさにため息が漏れた。

「そっか。うん、そうだよな」

菅原くんは力強くそういった。自分に言い聞かせるように。
そしてなぜか、私の手をつかむ。ビックリして、足を止め。彼の正面を向く。まっすぐ彼が私を見据える。なんですか。なんか悪いこといったかな?

「すが、!」

次の瞬間、彼は私を抱き締めていた。肩にかけていたサブバックが地面に落ちた。触れた熱が彼に伝わるのではと。私の熱が、彼に伝わるのではと。いや、そもそもこれはなんのつもりなのか。訳がわからず私は彼の胸のなか、じっと硬直したままだった。




140711
 

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