ハイキュー中編

□保健室にて
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お姫様だっこと言う恥ずかしい体勢から解放され、保健室のベッドに下ろされた。靴を脱ぎ、横になるよう促される。

「いやいや、ベッドの無駄遣いでござんす」

「いーから! おとなしく寝てろよ?」

「……、」

目を逸らし、俯いたら、菅原くんが私の顔をつかみ、自分の方を向かせた。目がかっちり合い、私は顔から火が出る思いをした。なんですか、なんなんですか。

「返事は?」

「……、は、ぃいー……、」

口をとがらせ渋々返事をすれば、いい子!と菅原くんに頭をなでられた。ああもう、今日はなんか頭が追い付かない。不良に絡まれ菅原くんに助けられ、彼女とまでうそとはいえいわれたり、だきしめられたり、極めつけはお姫様だっこ。

こんな幸運、続いていいのかと、不安になった。

「じゃ、俺行くから。少し、休んでな?」

にっと笑い菅原くんは保健室から出ていった。

ふう、と肩の力を抜き、ベッドに横になる。真っ白でのり付けされたシーツはパリってして気持ちいい。天井もなにもなくて真っ白で、ボーッと見つめていたら、なんだか瞼が重くなってきて。保健室効果、すごいな。私はそのまま眠ってしまった。





さらっと私の髪を透く大きな温かい手。安心するなって、寝返りを打つ。一瞬手が引っ込められて、でもまた私の髪を透く。
誰だろう。お母さん?いや、違う。私はこの手を知らない。
次第に髪を透いていた手は、私の頬を包み込む。あったかい。優しい。誰だろう。安心する。

ん、と目に力を込めて意識を現実に戻す。ゆっくり目を開けたら、その手はさっと引っ込められ、私の視界に薄い色素の髪、優しい瞳、ふんわり笑う。

「す、がわら、くん?」

憧れの君、菅原くんが見えた。心なしか頬を朱に染めた彼にふにゃりと笑い、また目を瞑る。
と、

「オーイ、如月。寝るな!帰るぞ!」

ユサユサと揺さぶられ、睡魔に落ちそうな私は再び現実に戻る。眠い目を擦り、起き上がる。隣をみたら、菅原くんが困ったように笑っていた。あ、あれ? 私……。あれ?

だんだんと思い出す。そうだ私はバレー見学中にボールにボーンして、お姫様だっこで保健室。で、そのあとの記憶が、ない。

「えーと、」

菅原くんに、笑いかけた。私、寝てましたか、と。彼はクスクス笑い、私の頭を撫でた。

「お目覚めですか、眠り姫?」

瞬間顔が赤くなる。何てことだ。寝顔を。人間のもっとも無防備且つアホ顔である寝顔をさらしてしまったのか!なんたる不覚……。いや、そもそも。

「どのくらい、寝てましたでしょうか?」

「俺が来てからは十分弱かな?」

悪戯っぽく笑う彼に私は不貞腐れた。

「なぜ起こしてくださらないでした?」

「あ、いや、」

なぜかここで彼は黙り込む。顔を赤くして。なんだ、そんなに変な顔で寝てたのか?

「と、とにかく、帰るべ! 下校時間、過ぎてる」

目をそらす彼にごまかされるように言われ、私は渋々ベッドを降りる。

「暗いから、家まで送る」

にっと笑う彼に、それは畏れ多いと顔を振ったが、彼には敵わなかった。今日わかったんだけど、菅原くんって、案外頑固。どうしたものかと思いつつ。菅原くんの言葉に甘え、私は彼に送ってもらうことにした。




140711
 

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