ハイキュー中編

□トモダチ
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新学期早々天然ちゃんというあだ名をつけられた私。まあ、お酢やろうとかよりはましかとため息をはく。

「あー、あーもう」

日直だるい。荷物重い。なんだって、こんな雑用やらねばならないのか。理科の実験嫌いだ。そもそもマッチをつけるとかさ。無理なんだよ。今日も危うく火事出すとこだった。冷や汗ものだ。

それにしても、片付け面倒だなー。

モタモタと、要領の悪い私。かごにビーカーを一杯積めて、持ち上げようとしたときだった。

横から手が延びて、ふいっとかごが浮く。驚きとなりをみたら、

「す、す、が、」

菅原くんがにこり、笑ってそれを持っていた。どもってうまく言葉がでない私をよそに、菅原くんは首をかしげておかしそうに笑う。

「酢? なに言ってんの、如月は!」

爽やかに笑いビーカーの入ったかごを準備室に運ぶ彼。なんで?なんで?
呆然と立ち尽くしていたら彼が戻ってきて、私の頭をわさわさ撫でた。

「あの理科の先生、人使い荒いかんね。女の子には、重すぎでしょ!」

ははっと笑う彼にかおが赤くなる。なんとまあ、彼は優しいのかと私は深々とお辞儀した。

「こ、光栄でございす」

「ございす?」

「あっ、間違えた、ござんす!」

ああ、違う。ございます、だよ。何で言えないのかな。私は焦って彼をみた。彼は相変わらず笑っていたけど。

「やっぱ如月って面白いなあ。ねえ、」

「な、何でございますでしょうか」

ああ、私ってこんなに口下手なんだと。いつものことだけど苦笑してしまう。
この性格のせいで、高校三年、友達らしい友達はいなかった。
別に寂しくはなかった。だって私の心にはいつだって、

「友達になってよ」

「え、?」

行きなり言われて頭がパーンってなった。憧れの君、菅原くんとお友だち?いやいや、おそれ多い。

「いやいや、私なんかがおこがましい」

ブンブンと大袈裟に手を振る。だけど彼はそれすら笑い飛ばす。

「ぷっ、たく。まあ、頼んでなるもんでもないべ。勝手に俺は如月のこと、友達だと思うことにする」

心底嬉しそうに笑った菅原くん。あまりの眩しさに目を細めた。彼はじゃあなと手を振り理科室をあとにした。一人、取り残され、私は暫し唖然とした。

「トモダチ」

その言葉が頭から離れなかった。





140711
 

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