ハイキュー中編
□トモダチ
1ページ/1ページ
新学期早々天然ちゃんというあだ名をつけられた私。まあ、お酢やろうとかよりはましかとため息をはく。
「あー、あーもう」
日直だるい。荷物重い。なんだって、こんな雑用やらねばならないのか。理科の実験嫌いだ。そもそもマッチをつけるとかさ。無理なんだよ。今日も危うく火事出すとこだった。冷や汗ものだ。
それにしても、片付け面倒だなー。
モタモタと、要領の悪い私。かごにビーカーを一杯積めて、持ち上げようとしたときだった。
横から手が延びて、ふいっとかごが浮く。驚きとなりをみたら、
「す、す、が、」
菅原くんがにこり、笑ってそれを持っていた。どもってうまく言葉がでない私をよそに、菅原くんは首をかしげておかしそうに笑う。
「酢? なに言ってんの、如月は!」
爽やかに笑いビーカーの入ったかごを準備室に運ぶ彼。なんで?なんで?
呆然と立ち尽くしていたら彼が戻ってきて、私の頭をわさわさ撫でた。
「あの理科の先生、人使い荒いかんね。女の子には、重すぎでしょ!」
ははっと笑う彼にかおが赤くなる。なんとまあ、彼は優しいのかと私は深々とお辞儀した。
「こ、光栄でございす」
「ございす?」
「あっ、間違えた、ござんす!」
ああ、違う。ございます、だよ。何で言えないのかな。私は焦って彼をみた。彼は相変わらず笑っていたけど。
「やっぱ如月って面白いなあ。ねえ、」
「な、何でございますでしょうか」
ああ、私ってこんなに口下手なんだと。いつものことだけど苦笑してしまう。
この性格のせいで、高校三年、友達らしい友達はいなかった。
別に寂しくはなかった。だって私の心にはいつだって、
「友達になってよ」
「え、?」
行きなり言われて頭がパーンってなった。憧れの君、菅原くんとお友だち?いやいや、おそれ多い。
「いやいや、私なんかがおこがましい」
ブンブンと大袈裟に手を振る。だけど彼はそれすら笑い飛ばす。
「ぷっ、たく。まあ、頼んでなるもんでもないべ。勝手に俺は如月のこと、友達だと思うことにする」
心底嬉しそうに笑った菅原くん。あまりの眩しさに目を細めた。彼はじゃあなと手を振り理科室をあとにした。一人、取り残され、私は暫し唖然とした。
「トモダチ」
その言葉が頭から離れなかった。
140711