ハイキュー中編
□あなたに出会う
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あの日君に会ったのはきっと偶然じゃなくて必然だと思う。
朝日が窓から差し込む部屋。重い瞼を抉じ開ける。鼻につくのは彼の香り。だけど隣にあなたはいない。
「あさ……」
グシャグシャの髪を掻きあげ、上体を起こす。昨日の行為のせいで服は纏っていなかった。初夏の朝はまだ薄寒く、私はブルリと身震いをした。
ベッドを降りてとりあえず風呂へ向かう。気だるさと眠さを醒ますために熱いシャワーを頭から被る。息もできないほどに。暫しシャワーの音がバスルームに木霊した。
斯くして私の一日が始まる。いつも通りの一日が。
風呂から上がり、下着一枚という霰もない格好。ハシタナイとかそんなのとうに忘れた感情。携帯をみれば彼からの伝言。
今夜は遊べないから
一言そうかかれたメール。別に寂しくなんかないしそういう関係だからと自分に言い聞かせ、私はそのままベッドに沈んだ。
誰もいない私の部屋は広すぎて怖いと思う。歳のわりに、というかかなり歳に見合わない広いマンションの部屋。これは唯一の彼からの贈り物である。
「徹くん……」
真っ白な天井に手を伸ばしても、何も掴めやしなかった。一人は慣れている。筈だった、のに。
服を身に纏い部屋を出る。鍵を掛けて向かう先は彼の会社。
及川徹は私の居場所でありながら居場所ではない。所謂セフレ。ただそれだけの関係だった。彼には歴とした恋人がいる。とはいってもそれが一人とは限らないし、長続きしたところを見たことはないけれど。
彼は人の上にたつのがうまかった。故に今、若くして会社を立ち上げて成功している。そんな彼の愛人だから、私は今の悠々自適な生活を手に入れたわけで。
迷わず社長室への部屋を向かう。渡された合鍵でドアの鍵を開けた。開けたドアの先には、スーツ姿の彼が私を優しく出迎えた。
「待ってたよ、ユリちゃん?」
斯くして彼に惑わされ、誘導された私は彼の部屋に足を踏み入れた。
140625