企画処

□ノン・アルコール
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クリスマス会。
病院の小児科勤務の私が参加するクリスマスイベント。
そこには、大好きな彼も参加している。



「名前先生。はやく、はやく」



手を引かれて、連れて行かれた場所にはもう、たくさんの子供と保護者。
小児科担当のナースたちが集まっていた。



「もしかして、私が最後だったりしたのかな」

「うんうん。違うよ。朝日奈先生まだ、来てないよ」

「そうなの。よかった」



まだ、雅臣が来ていないことに、一種の安堵を覚えながら、その場に入っていく。
色とりどりに飾られた、ツリー。
七夕のように、願い事が下がっていたりもする。
これはこれで、なかなか可愛いツリーの完成だ。



「先生、これ朝日奈先生が付けようって言ったんだよ」

「朝日奈先生が?」

「うん」



笑顔で答える子供を見ていると、癒される。
私もいつかは結婚して、子供を産むんだな。
結婚相手は、わからないけれど・・・雅臣であることを望んでいる。



「もしかして、最後だった?」



後ろから声がすれば、一斉にそちらに視線が向く。
そこには、いままで診察をしていた様子の雅臣がいた。
癖らしく、頭を少しかきながら・・・


子供たちはみんな嬉しそうに、雅臣の近くに寄っていく。
そして、私の手を引いてくれた子も・・・。



「うわ、いきなり来たからびっくりした」



笑う中には、雅臣がいる。
とっても、いい絵になっているじゃない。

持っていた、携帯でパシャと撮ってみる。
それは、携帯にしてはなかなかのできだと思う。
近くに来た、ナースたちに見せてみたら、かなりの出来だといわれた。



「名前ちゃん、写真撮ってないで助けてよ」

「はいはい、いま助けますよ」



知らないうちに、どんどんと姿が小さくなった雅臣に助けを求められた。
でも、こんな面白いものはないと思い、ムービーを撮ろうとしたら。



「はやく、朝日奈先生助けないと他の人に助けられちゃいますよ」

「それは、嫌だ」



仕方なく、携帯をしまい雅臣を助けることにした。
子供たちは、あっさりとひいてくれたりしたから、本当に助けが必要だったのかと疑問に思ったけれど、口にはださない。



「名前先生、急患です」

「わかった。いま行く」

「名前先生、行っちゃうの?」

「ごめんね。でも、その代わりに朝日奈先生、置いていくからね」



そういいながら、頭を撫でてやると笑顔を見せてくれる。
本当に、可愛いと思う。



****



着替え終わり、病院をでてから一室を眺める。
そこは、今日行われていたクリスマス会の部屋。



「名前ちゃん、お疲れ様」

「雅臣さん、待ってくれてたんですか」

「ああ、うん。折角のクリスマスだしね」

「ありがとうございます」



車のそばにいるだけで、中にはいなかったようで身体が冷え込んでいた。
何時間、待っていたんだろう。



「身体、冷えてますよ」

「やっぱり、冬は寒いね」

「話、かみ合ってないんですけど。雅臣さんも医者なんだから、少し自覚してくださいね」



首にしていたマフラーを付ける。
すぐに、執られてしまうとわかっていても、してあげたい。
そんな気持ちが先走った。



「ありがとう。でも、名前ちゃん寒くないの?」

「寒いですよ。でも、こうすれば暖かいですよ」



ぴったりと雅臣に抱きついた。
心臓も聞こえるくらいの距離。

驚きはしたようだけど、すぐにいつも通りになってくれた。
年下には、甘い雅臣に。



「弥ちゃん、待ってますよ」

「いまだけは、名前ちゃんのこと考えさせてよ」




ノン・アルコール



困った顔も素敵なお医者様。
甘い言葉を囁かないかわりくれるのは、甘い甘い優しさ。



「メリークリスマス。雅臣さん、来年も一緒に過ごしてくださいよ」


20111218
お題:リラン

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