企画処

□甘い囁きをちょうだい
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大好きな彼は、有名な声優。
新人で期待されている椿くん。
椿くんとは同じマンションに住んでいて、やっと先月想いが繋がったばかり。
だけど、今日はイベントがあるために一緒にすごせないといわれてしまった。
でも、椿くんは私にイベントのチケットを渡し、“来て欲しい”と言われ、イベントに足を運ぶことにした。
何でも、ゲームのイベントらしくてとってもファンの人がたくさんいる。
椿くんが用意してくれていた席は、とっても椿くんを近くで見れる席。
一緒にすごせなくても、この空間の中ですごせる。
それだけが、救いになっている。


イベント中の椿くんはとっても輝いていた。
いつも見ている椿くんじゃなくて、そこには知らない誰かがいるよな感覚に陥る。


なんだか、泣けてくるな。
椿くんは私の知らない顔をするから・・・


イベントが終わり椿くんには、会えそうもないから真っ直ぐ家に帰ることを決めた。




*****




「ただいまーって、誰も居ないか」



今日はクリスマス。
家族はみんな出かけてしまい、いま部屋にいるのは私だけ。
寂しいな。椿くん。


ピンポーン
インターホンが鳴る。
こんな時間に誰だろう?
急いで、玄関に向かうとそこには椿くんがいた。



「会えないんじゃなかったの」

「名前が悲しそうな顔をしているのが見えたから、来ちゃった」



いつもの満面の笑みを浮かべながら抱きしめてくる。
暖かい・・・。
椿くんの温もり。



「あんなに、近くで名前に悲しそうな顔されたら心配になるだろ」

「ごめんね」

「何があったの?」



椿くん、見てたんだ。
なのに、私は・・・椿くんを心配させてしまっていたんだね。



「なにもないよ」

「そんなことない。俺が何かしたんだろ」

「違う。違うの。だから、椿くんのせいじゃないの」



きっと、重い女だと思われる。
せっかく、想いが通じてもこんなこと言ってしまえばダメになってしまう。
そんなの絶対に、嫌だ。



「だったら、何だって言うんだよ」

「それはね・・・」



言葉に詰まってしまう。
本当に言ってしまっていいのだろうか。



「名前。俺は何を言ってもちゃんと受け止める」

「知らない椿くんを見たら、急に怖くなっちゃったの」

「うん」

「きっと、いつか私の知らないところに行ってしまうって思ったら・・・」

「そっか。俺が不安にさせちゃったんだね」




椿くんの甘くて優しい声。
身体中に響き渡る。
それだけでも、十分なのに椿くんは優しい。
さっきよりも強い力で抱きしめてくれる。



「結婚しよう」

「え・・・っ」

「前から言おうと思ってたけど、決心が着いた」

「私なんかでいいの?」

「名前がいいんだよ。ずっと、小さいときから好きだったんだからな。梓や棗にも渡せないくらい大事なんだよ」




甘い囁きをちょうだい



玄関先にいたことに気づき、部屋へとあがる。
そこには、小さなケーキとシャンパンが置いてある。

シャンパンをグラスに注いで乾杯をする。
これからの未来と今日に。


20111211

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