企画処
□ 邪魔してごめん、わざとだけど
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受験生には、クリスマスなんてない。
学校の先生に言われた言葉。
当日になるまで、この言葉を気にしたことはないとは、言い切れない。
クリスマスが近づくにつれて、街が浮き足だしはじめる。
その雰囲気は、私にとっては単なる毒。
クリスマスはどうせ、塾だと思い込んでいたら模試だけという話で。
三教科しか受けない私は、午後一番で終わってしまう・・・とういうことは、街の甘ったるい雰囲気を身体に感じるということであって・・・
彼氏もいない私にとっては、最悪な午後に成り代わろうとしている真っ最中。
「あれ、名前も今日の模試終わりなの?」
「あっ。祈織くん。そうなんだよ。これから、どうしようかと思って」
「もしかして、暇だったりするのかな」
「すごい、暇だったりする」
「だったら、うちに来ない?」
「え!?いいの」
突然のお誘いに、びっくり。
だって、塾内でもイケメンと名高い祈織くんですよ。
まあ、ちゃっかりと学校も一緒だったりするから仲はいいほうだ。
「兄弟たちが出かけていていないから、よかったら俺の家に来て、一緒に勉強しない?」
まじですか!!!!!!!!!
このお誘い。志望校も一緒の祈織くんと勉強とか。
「名前は、今日の模試どうだった」
「えー。無理、無理。全力は出し切ったつもりだけど英語がね」
苦笑気味になるのを抑えられない。
歩いているだけで、チラッチラッと周りの人がみる。
やっぱり、祈織くんの顔は栄えるな。
***
祈織くんの家に着けば、すぐに祈織くんの部屋に通された。
部屋の中は、とっても綺麗に整理されていて。
私の部屋とは大違いだ。
「座って」
「あ、はい」
「飲み物は紅茶でいいよね」
祈織くんの手際のよさに感激してしまう。
私って女だよね?
この女の私より手際がいいとは!!!
ぼーっと祈織くんの姿を見ていたら、後ろから何かが近づいてきた。
「誰?この不細工な人」
「ぶ、不細工って!!失礼な!!!」
後ろを思いっきり振り返ると、そこには。
なんと、人気アイドルの朝倉風斗がいた。
「え・・・っと、祈織くーん」
この場にいない、祈織くんに助けを求めてみる。
そうすれば、何があったの?って、顔でこちらに来た。
「・・・風斗。帰ってきたんだ」
「まあね。わかんない問題あったから聞きに来たんだけど、邪魔だった?おねえさん」
「えっ!?」
そこで、私に話を振るかな・・・
とっても、困るんだけど。
祈織くんを見つめてみると、困ったような顔で見返された。
「僕も受験生なんだから、教えてくれるよね?兄さん」
風斗くんが、祈織くんのことを兄さんって・・・
「祈織くん。えーっと、朝倉風斗くんとご兄弟なんですか?」
「うん、兄弟だよ」
兄弟なんだ・・・って、何ですか!!!!!
このイケメン兄弟は!!!!!!!!!!!!!
「で、このおねえさん誰なの?兄さん」
「ああ。名前だよ。塾と学校が一緒なんだ」
風斗くんの棘のあるような言い方をスルーしている祈織くん。
なんか、お兄さんって感じがする。
「そうなんだ。名前さんよろしくね」
さっきまでの冷たかった視線がなくなり、人懐っこい笑顔に変わる。
本当に、芸能人なんだ。っと、感じた。
「あっ。はい、よろしくね。風斗くん」
「僕も受験生でわかんない問題あるから、一緒に勉強してもいいよね。それで、名前さんが教えてくれると嬉しいんだけど」
この子。変わり身がはやい。
祈織くんに教えてもらうために、来たんじゃないの?
なんで、私?祈織くんより成績悪いし・・・自信ないな。
「祈織くんのほうが、教え方うまいと思うから祈織くんに聞いたほうがいいよ」
「そんなことないよ。名前のほうがうまいだろ」
祈織くんにそう言ってもらえただけで、嬉しい。
顔には出さないけれど、心の中では飛び跳ねてます。
「でも、僕は名前さんのほうがいい。それに、今日はクリスマスでしょ。綺麗なおねえさんと一緒にすごしたいと思っちゃダメなの?」
私の位置から見える風斗くんはというと・・・
上目遣い。アングル半端ないです。
実は、風斗くんのファンである私にはもったいない行為だ。
「そんなことないよ」
少し顔を赤らめてしまった、私をみて祈織くんは複雑な顔。
風斗くんは勝ち誇った顔をしていたらしい。
邪魔してごめん、わざとだけど
「名前さん、本当に綺麗だよね。僕、好きになっちゃいそう」
「風斗、名前が困るだろ」
困るのは、困るけど・・・
いい思い出のクリスマスになったな。
なんて、暢気なことを思ってしまう。
20111126
お題:確かに恋だった