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□知らないキミに嫉妬する
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「おまえ、眼鏡なんかかけてたっけ?」
車で宗介を迎えに行ったときに、いきなり言われた。
最近、かけはじめたから初めて眼鏡姿を現したようなものだから、驚くのは仕方ないと思う。
というか、宗介は何で驚いているのだろうか?


「視力検査で、左目だけ悪かったから。それに、今年は免許の更新あるから」

「そういうことか。それにしても、目悪くするとか何やってたんだよ」

「PCのやり過ぎ…かな。あと、スマホ」

「そっか。控えろって、言っても葵には無理だろうけどな」

「うん、無理。ネットないと生きた心地しない」

「オタクが」


宗介は何かと私に構ってもらえない時とか、すぐにオタク扱いするが、そこは否定しない。
だって、私の趣味でもあるから。
それに、宗介だって私からみれば立派なオタクだと思う。


「自分だって水泳オタクじゃん」

「否定はしない」


やっぱり。ここは、似てるなって思いながら海岸沿いを運転する。
夜だから、街灯だけが頼りになる。
ひとりで運転するときは、怖いからCDを大音量で流したりするけれど、今日は宗介がいるから、そんなことはしない。
ただ、横で宗介と話してるだけでいい。


「宗介、ありがとうね」

「ん、何がだよ」

「お喋りしてくれて」

「そんなことか。葵が怖がらないようにしなきゃだもんな」

「はっ、黙れよ。年下の癖に生意気な」

「そんな、年下を彼氏にしたのは誰だよ」


そんなこと、言われると困ってしまう。
私が宗介のこと、大好きだって知ってて聞いてくる、この男は列記とした確信犯だから。


「私だよ。文句、ある?」

「全くない。むしろ、嬉しいくらいだ」


そう言いながら、運転している私の頭を撫でる。
手を払いたいけれど、危ないからそんなこと出来ない。
だって、大好きな宗介に怪我を負わせたくないから。


「今日は大人しいな」

「いま、運転中。Do you understand?」

「わかってるよ。それにしても、眼鏡似合わねぇな」


わかってることをズカズカと言ってくるは、宗介が面白がってるときだ。
私だって似合ってると思って、かけてないのに。
信号待ちをしていた私の顎を掴んでいきなり、宗介の方向を見せられる。
信号見たいのに、と思いながら宗介の深い瞳を見ていると、眼鏡を取られた。


「ちょっと、宗介」

「眼鏡は邪魔だな。お前と距離が出来ちまう。大人しくしてろ」


そう言いながら、唇を塞がれる。
強引なやり方にもほどがあると思いながらも、それに応えている私もどうだろうか。

後続車からのクラクションの音と共に、それは終了を告げ、運転が再開された。



20140922

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