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□埋めようのないゼロセンチ
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「幼馴染み」その枠組みから外れることがいつか来るのだろうか。
もう、何年も友達以上恋人未満の関係が続いている。
それに、こんなにも「幼馴染み」という言葉が便利だとは思わなかった。


「宮下さんって橘くんと仲良しだよね」
うん。と、笑顔で答えれば、なんで?みたいな顔をされる。
真琴は身長が高くて顔立ちもよくて、水泳部で表彰されたりするから、有名っていえば有名な人だ。
そんな真琴と仲が良いだけで、私は最近なにかと知らない女子に話しかけられる。
「幼馴染みだよ」と、答えればその顔はとても喜んだような顔をする。
それを見ると、この子は真琴に恋をしているんだと気付いてしまう自分がいた。
この子のように真琴にアプローチできるような女の子になりたいと何回も思ってしまう。
「幼馴染み」という安全な枠組みから外れてしまえば、私はもう真琴のそばにいることができなくなってしまうから。


「葵?さっきから、ぼーっとしてどうしたの?」

「ああ、なんでもないよ」

「ならいいけど。あの件、考えてくれた?」


目をキラキラさせながら、ハニカム真琴は本当にふんわりとしてて、王子様って言葉があてはまってしまうよだ。
そんな真琴に頼まれた水泳部のマネージャー。
でも、松岡くんの妹がいるのになんで、私までマネージャーをする必要があるのかがわからない。
部員だってそんなにいないのに。


「真琴には私が必要?」

「必要に決まってるだろ」


ふわふわと微笑んでいる真琴には、私のした質問の意味はわからないだろう。
きっと、遙に真琴が必要なのと一緒のレベル。
だから、そんなに考える必要もない質問。
こんな質問した自分が馬鹿だと思ってしまう。


「みんなも葵がマネージャーやってくれれば、モチベーションあがるよ」

「でも、そこには凛がいないよ」

「そうだけど…」


言葉が詰まってしまう。
凛のことは話さないようにしていた。
ただただ、心が醜い私はどうしても話さなくてもいいことを言ってしまった。
これは、彼の心にいる遙への嫉妬なのかもしれない。


「凛はいなくても、俺は葵が必要だと思う。それに俺自身、葵が必要なんだよ」


告白紛いのその言葉にドッキっとくる。
それでも、彼にとって私はただの幼馴染。
その枠組みを超えることはできない。


「いいよ。真琴がそう言ってくれるなら、私はマネージャーするよ」


いつもそうだ。
私は真琴の頼み事は断れなくて、ただ真琴の笑顔がみたいだけになる。
どんなに、苦しい時でも私にだけ頼ってくれるそんな真琴が好きで。
私にはこの気持ちを押し殺すことしかできないのか。
そして、真琴は嬉しそうにまた微笑みながら「ありがとう」っという。
私の気持ちは夕焼けと同じくらい真っ赤。
この気持ちにはやく気づいてよ。


20130930
Title:確かに恋だった

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