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□実に滑稽
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水に溺れる感覚。
それをどう感じるかは私の問題。
ハルはその感覚をどう感じているのだろう。
…水
ハルの全てのような存在。

私はどうやったら、その感覚に勝てるのだろう。
ハルは私よりきっと水を選ぶはずだ。
そう、思ってしまうのは私の心が弱いから。


「どうした?」


無口な彼がくれる言葉にさえ、涙が溢れてくる。
心配掛けたくない。
でも、とめどなく溢れてくる涙をぬぐうすべを私は知らない。


「ねえ、ハル。私はいま、無性に水が憎いの」


ただただ、思っていたことを発した。
でも、ハルは何も言わない。
ハルの大好きな水を嫌う私は、もうどうしたらいいのかな。

人類は海から生まれた。
そんな考えをしてみたら、それに一番当てはまるのはハルで。
私は木から陸に降りた立った人類。

生まれ育った環境が違いすぎたのかな。


「ハル。もう、どうしたらいいんだろうね」


そう言って、私は海に制服のまま飛び込んでみた。
服が水分をたくさん含んですごく重く感じる。
こんな水さえ、ハルは愛しているんだ。

このまま溺れてしまえば、私はもう水について考えなくていいのか。
それにハルにももう会えない。
それでも、ハルの好きな水と一体になれるなら…
そう考えてしまうと、私は凛と真琴を裏切ることになってしまう。


「ご、めんね。…ハル」


沈む意識の中でつぶやいた言葉。
呼吸なんてできやしない。
霞む視線の先には必死に私を助けようとする彼がいる。


次に目が覚めたときに彼が言ったひとこと
「馬鹿か。おまえが必要なんだよ」
それだけが、いまの私の存在理由。

水に嫉妬するまで私はハルが愛しかった。



title:彼女の為に泣いた
20130914

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