ヴァンパイア騎士

□愛を求む様は実に滑稽
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僕の知っている大事な女の子は、もういなくなってしまった。
僕以外の男に愛される未来を選んだらしい。


何も言わずに僕の目の前から消えていった君は、どんな表情をしていたのだろう?


僕以外に愛される…
それを苦痛とも思わずに受け入れるのか。

それとも、親か…。
親の為に僕との婚約を破棄したのか。
貴族階級が純血種に…玖蘭に逆らおうなんて、なんて無謀な。



「…悠様」

「うん、なに」

「花嶺家の響華様の行方なのですが…」

「早く言って」



やっぱり、僕の中では君が1番みたいだよ。
心の底から、君のこと抱きしめたい、血を吸いたい。
この飢えを満たしてくれるのは、きっと君の血だけなんだよ。
樹里の血じゃ足りない。満たされない。



「…監禁されているようです」



…監禁。どういうことだ。
響華は僕以外の男を選んだのではないの?
なんで、監禁なんてされなきゃいけないのかが、わからない。



「その…とても言いにくいのですが、その監禁には樹里様が関わっているようで」

「…樹里が。そう…」



樹里が…か。
驚くことはなかった。
響華が姿を消してからは、樹里がなぜか生き生きしているのが伝わってきたから。
きっと、樹里が僕から響華を奪ったんだ。



「それで、響華はどこにいるの?」

「玖蘭家の地下にいるようです」



玖蘭家の地下か…。
近すぎて気づかないな。


樹里、君はどうしてこんなことをするんだい?
僕の可愛い妹のままではいてくれないみたいだね。


僕の足は、地下へと向かう。
愛しい愛しい響華がいるという地下へ。



「…響華」



壊れた人形のように、ぐったりとした姿。
久しぶりにみる響華の姿。愛しさが溢れてくようだ。

でも、傷が…。
大抵の傷なら治るのに…治っていないということは、酷い仕打ちをうけていたんだね。



「いますぐ、ここから出してあげるよ」



鎖なんて関係ない。
こんなに、響華を傷つけて…



「…は…悠さ…ま」

「響華。僕のことがわかるのかい」



彼女はそのまま、僕の腕の中で気を失ってしまったようだ。
この血をわけてあがられたら…。
血の掟なんてなくなってしまえばいい。


響華を抱えたまま、部屋に戻れば樹里がいる。
腕の中の響華をみて、驚いたような顔をしたがすぐに、泣きそうな顔をしていく。



「悠。なんで、その子を」

「樹里。君はやってはいけないことをしたよ。僕の大切な子をこんなに痛めつけて。他の男を幸せに暮らしているなら諦められたけれど、監禁されているなんて」

「…ち、違うの。話を聞いて」

「聞く話はない。僕の目の前から消えてくれないかな。いまの僕は、君になにをするかわかならい」

「そ、そんな」

「はやく、消えてくれ。そして、僕のかわいい妹のままでいてくれ」



樹里にとっては残酷な言葉にしか聞こえないだろう。
でも、この言葉は僕と響華の未来を守る言葉だよ。


響華、ごめんね。
これからは、ちゃんと僕が君のことを守るよ。




愛を求む様は実に滑稽



愛されることを求めたのは、樹里だけじゃなくて僕もだね。


20120324
Title:彼女の為に泣いた

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