ヴァンパイア騎士

□殺したいほど愛してる
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綺麗な嘘を吐く続き


今日も彼は訪れる。
毎晩、私の目の前に現れ何事もなかったかのように消えていく。
彼は私に何を求めるの?
血?命?復讐?

あの夜会のときから…
私は、あなたに囚われてしまった。



「響華さん…。今日はどうです?」

「…まあまあね。あなたさえいなければ」

「また、そんなことを言って。僕を悲しませたいのですか」



嘘。その言葉は嘘。
私を監視したいだけなんでしょ?
李土の子を宿した私を。



「なんで、答えてくれないのです?」

「…枢にとって、私はどういう存在なのか教えて」

「僕にとって、響華さんは愛する女性ですよ」



頬笑みながら言葉が紡がれる。
私が愛おしく少し大きくなったお腹を撫でれば…
すぐに手を掴まれる。



「ねえ、目が笑っていないわ。本当は、何が目的なの?」



私の言葉に、何も感じないの?
無表情な顔が近づいてくる。



「どうして、あなたは僕のことをいじめるのです」

「いじめてるのかしら」

「そうですよ。ですけど、その口は少し塞がせてもらいますよ」



何をするのか、わかっていた。
顔が近づくだけで。その癖があまりにも李土に似ているから。
受け入れることしかできない。



「キスするときは、大人しいんですね」

「反抗して欲しかったのかしら。それとも、殺して欲しかった」

「あなたに、僕は殺せない」

「知ってるわよ。玖蘭の始祖のあなたを殺せるわけがない。でも、あなたは私のことが憎い?樹里と悠を裏切った李土の子を身籠っている私を殺したい?」

「あの男の子でも生まれてくる子には、罪はありません」



そんな言葉は、所詮綺麗ごと。
誰もが言える言葉じゃない。
本当は憎いんでしょ。殺したいんでしょ。



「何度も言いますが、僕は響華さんのことを愛しています。たとえ、あの男の子を身籠っていても、僕はあなたのことが好きなんですよ」

「…枢。その瞳に偽りは?」

「ありません」



「…そう」消えるように呟く。
「もう少し、そばに来てちょうだい」
この言葉を聞いて、枢はすぐにそばに来てくれる。
そして、静かに首筋に牙を立てる。
枢は絶対に拒否しない。
血を吸えば心がわかるはず…。
そんなの気にしなければいい。


血を吸ったときに感じた枢の血の味は…


殺したいほど愛している



「僕の気持ちわかってくれましたか。…響華さん。僕との子を宿してくれますか?」



最後に笑ったのは枢で…
そのときの表情が、とっても李土に似ていた。
私はまた、同じような人に愛され愛すのかしら。


20120323

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