ヴァンパイア騎士

□すべてを失う午前零時
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枢の叔母
※死ネタ、グロ


大好きな人たちはみんな私を置いて逝ってしまった。
もう、幸せな時間が戻ってくるなんて思ってもいない。
それなのに、最近はずっと幸せな時の夢を見る。
樹里に悠、それに李土。
みんな私の大好きな兄弟たち。
死ぬことのない永遠の時間を一緒にすごすはずだと思っていた。
それも、簡単に崩れてしまったのはいつからだっただろう?
悠が樹里に想いを伝えたときか。
李土が樹里と悠の子を殺したときか。
きっと、考えてもわからない。一生わかることのない疑問だ。


「…嫌な夢」


水を飲もうとタブレットをコップに入れ水で溶かした。
これで、少しは落ち着くかな。
そんなことを思いながら、ソファーに座る。
今日は綺麗な満月。
こんな夜は不吉なだけだな…。


「こんばんは」


入口から聞こえる来訪者の声。
もう、何年もこんなところに来る者はいなかった。
元老院の者以外に。


「珍しい。枢がお友達を連れてここに来るなんて」


かわいい、かわいい甥にあたる枢。
その後ろにいるのは早園のお嬢さんに架院の息子さん。


「響華さん、ここに来た理由はわかっていますよね」


静かに透き通る声。
ええ、と頷けば満足そうな悲壮感に沈んだような顔。
そんな顔をされても私にはどうすることもできない。
ただ、枢に殺されるだけの存在である私には、もうなんの力もない。


「痛みを感じないようにしてね」


そっと微笑めば、枢は容赦なく心臓を抉りだす。
こんな光景、誰が予想しただろう。
誰もが目を背けたくなる光景に違いない。


「心臓を喰らわれてもなおも、生きられる純血種の生命力に感謝するべきかしら」

「もうすぐ、あなたの愛しい人たちのそばに逝けますよ。…響華」

「最後に…呼び捨てなんて不躾な甥ね。…その表情まるで、李土みたい」


その言葉を最後に、枢によって灰にされた。
きっと、最後の言葉が気に入らなかったんだ。


「安らかに眠ってください、手に入らなかった愛しい人」




すべてを失う午前零時


20131010
Title:彼女が為に泣いた

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