ヴァンパイア騎士

□血の味しか私にはしない
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「もう、やめてよ。ねえ、李土」



どんなに、頼んでもやめてくれることはない。
だって、李土にとって私は餌でしかないんだから。



「響華は、僕に命令する気か」

「そんなじゃないよ。これ以上吸われたら私の体力が持たないの」

「そんなことの心配か」



クツクツとのどを鳴らす。
離してくれないんだ…

意識を手放す感覚に陥る。



「響華、お前は僕のものだからな」



意識を手放す前に、聞こえる声。
私は李土のものなの…?



「やっと目を覚ましたか」



半日してから、目が覚めた私の隣には李土がいて。
とても、優しい手つきが髪を梳く。



「…李土」



手を伸ばせば、触れる距離にいる。
李土に触れるだけで幸せ。
私はまだ、こうして生きていることができるから。



「李土。李土。李土」

「どうした、そんなに僕の名前を連呼した」



気が狂ったのか?とでも、いいたそうな瞳。
もう、私は気が狂っているんじゃないのだろうか。
李土に気に入られて、囲われた日から・・・
ずっと、永い時間。



「李土。好き」

「そうか。僕も響華を愛しているよ」



餌として・・・
最後の言葉が聞こえる。
李土は言っていないのに、何かが聞こえる。


だって、李土は私のことを愛してるって言ってた。
だから、餌としてなんて嘘だ。



「李土。餌としてなんて嘘だよね」

「何が言いたいんだ。響華は。僕の言葉が嘘だと言いたいのか」



李土が怒る。
私は李土を怒らせてしまった。
私が悪いの。



「ごめんなさい。ごめんなさい。李土、ごめんなさい」



何度も謝る。
李土はそのたびに、顔を崩す。
綺麗な顔が歪む。
私が歪ませているの。
ごめんなさい。



「まあ、いい。僕は響華のことを餌としてではなく、そばに置きたいから置いているまでだ。勘違いはするな」



どんなに言われても私はあなたの想いを知らない。
あなたの血を知らないから。
ねえ、李土。
私はいつ、李土の血の味を想いを知ることができるの?


他の血なんていらない。
だって、なんの味もしない。
ただの血の味しかしないから。


李土の想いが知りたいから、李土の血が欲しいよ。



20111113
お題:忘却曲線を越えて

李土⇔ヒロイン
李土様がヒロインを求めすぎているだけのお話

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