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□記憶のピース
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今夜は満月
いつもなら疲労のため死んだように眠る俺
けど、今夜は違った

最近思うことがある
前世の記憶で原作知識は忘れることなく覚えているのに
それ以外は何一つ覚えていない

18歳でトラックに轢かれて死んだ
そのまま神が現れいつの間にか転生

ポンポンと事が進んでいった

でも、死ぬ前は?
俺はどんな生活を送っていた?
家族は?
友人は?

そんな簡単なことさえも思い出せない
親父と呼んでいたのは覚えてる
でもそうすると母親は?

わからないことだらけだ


『なんなんだよ・・・』

『教えてやろうか?』

『!?』

桜に寄りかかり
まっすぐと俺を見る
親父にそっくりだけど違う・・・

原作知識から探るに・・・こいつは


『俺の妖・・・か』

『ご名答』

片目をつぶる癖は俺も自覚してる
こいつだって片目つぶってるし
けどそっくりな人物がやると親父に見えちゃってなんかなー


『それよりお前は俺の過去を知ってるのか?』

『俺はお前だからな』

『そっか・・・』

『この記憶は、一時的に俺が預かってる。でも、何かを引き金にお前に返す』

『引き金ねぇ』

『まあ、かなりやばい内容だしな。その内容と全く同じようなものを近いうちに体験するぜ』

何してたんだ俺
何をどうしたらやばい記憶なんか持つはめになるんだ
て言うか体験したくないです


『お前がやばいんじゃなくて親がだな』

『親?』

『おう。ちなみにトラックにたまたま轢かれたわけじゃないぜ』

『は?』

『お前がわざわざトラックの前に出て自殺したのさ』

自殺?
何故・・・


『まあ、近いうちに返すさ』

『そう・・・』

そう言ってうつむいて顔を上げたらもういなくなっていた
俺が自殺ね・・・

いったい何を思って俺は自殺なんかしたんだ
しかも魂が色濃く残って俺は転生した
それだけ前世に未練があったってことだろ?

なんなんだよ・・・


「・・・蓮斗?」

『親父・・・』

名前を呼ばれて振り返れば親父の姿
心配そうにこっちを見ている


「どうかしたのかい?」

『・・・なんでもないよ』

同じ体験をする・・・か
まさか、山吹乙女の件か?

・・・ヤベ、俺フラグ建築してるじゃん


『眠れないんだ。体は疲れてるはずなのに』

「おいで」

抱きあげられた
五歳児だからまだいけるのか
なんかちょっと悔しいな


『え!?ちょっと待て!?い、一緒に寝んのか!?』

連れてこられたのは親父の部屋
抱きかかえたまま親父は布団にダイブ
俺は親父の胸板に顔を押し付けられた状態で布団の中だ


「おう。こうしてれば自然と眠くなんだろ」

そんな無茶な
っと思ったけど
すでにもう眠くなってきました

親父の規則正しい心臓の鼓動が聞こえてくる
落ち着くんだよね心臓の音
リズム的な意味で


『親父・・・』

「ん?」

『しばらくさ、こうやって一緒に寝てくれない?』

「俺は別にかまわねぇぜ」

怖い
必ず来る山吹乙女との対立
親父のためにこのちっぽけな命を捨てる覚悟はある
覚悟はあるけどやっぱり怖くて


「・・・素直になれよな」

『え?』

「何に怯えてんのかは知らねぇが・・・怖いなら怖いって言っていいんだぜ?」

『あ・・・』

無意識に親父の着物の裾を握ってしまっていたらしい
その手を親父が自分の手で包み込む


「お前はいつもそうだ。自分一人で抱え込むな・・・」

『うん・・・』

余計な心配かけちゃった・・・
こんな顔させたくなかったのに


『じゃあ、明日から素直になるよ』

「おう。そうしろ」
 

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