ディバインゲート

□好きになるとき
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『お前は正真正銘の馬鹿者だな。雨で濡れた体でそのまま熟睡なんてするから風邪を引くんだ』


と、全て表情を変えずに淡々と話しながら風邪で寝込む名無しさんの看病をするのは炎神スルト。


『…ごめんね』

『謝っている暇があるなら治す努力をしろ』

『無茶だよそんなの〜!』

『病人は黙れ、悪化するぞ』


といって、汗を拭いてくれる。
口調はきつくても、その拭いてくれる手つきは優しい。
不器用そうに見えていたのを思い出すと、途端に悪かったなあと思い始め、悟られないよう誤魔化しで目を閉じる。


『なんだ、寝るのか?』


ぴた、と手のひらを額に乗せながら言った。
突然すぎて名無しさんはカッ!と目開く。


『ね、寝ないけど…びっくりしたから』

『熱があるか確かめたんだが、体温計よりも触診のほうが早いと思ったんだが、お前は嫌だったか』

『いっ嫌なんかじゃないけど!』

『けど?』


と、やけに低く色っぽいような、例えようのないとにかくかっこいい声でそう言いながら、目にかかる前髪を指で横に流す。


『そっ…』

『?』

『やっぱいい、忘れて』

『前からだが、変な女だなお前は』


ふ、と目を伏せて小さく笑った。
そんな彼がいつも以上にかっこよく見えた。

何気なく、素での行動なんだろうけど、それをされている名無しさんにとってはどれもドキドキするもので顔が照れて熱くなっているのがわかった。


『おい、さっきよりも熱いな…悪化してきたか』

『う、ううん、ちがう大丈夫』


そっ、と弱い力で彼の手首に触れる。
その触れた手に、スルトは手を重ねてきた。


『傍にいてほしいなら最初からそう言え』

『え、え、??』

『お前、体調の悪い時には怖い夢を見ると言っていたな。だから、お前はこうして俺の手首を握って怖さを紛らそうとしている、そうだろう?

『…』


合ってるけど違う!
心の声はかなり大きかった。


『心配するな、お前が治るまで看病をしてやる。お前が言うなら傍にいてやる、だからお前も早く努力して治せ、いいな』

『それは、処方された薬飲まないと』

『いいな?』

『は、はい』


やや強制というか強引というか。


『俺で足りなくて不満ならシグルズでもヘグニでも誰にでもいいから頼め、俺も極力努力はする』

『……ありがと』


こんなに優しかったっけ
こんなに話したことあるっけ

なんて疑問に思う。
彼は、ああ、とだけ言って頭を撫でてくれた。

優しくて、強い彼をまたひとつ好きになった時間だった。



おわり

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