ディバインゲート
□嫉妬くらいするものだ
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『少しは女の子らしくしなさいよ』
と言うのは青い髪をした男だった。
とある女の髪を指先で弄っては文句をつけ、彼なりにアレンジをした。
『ご、ごめんなさ…』
『アタシが悪いみたいでしょう、謝るのはやめて頂戴』
男のくせに、女より女らしい彼は口元に手をそえて小さく笑った。
そんな彼を見て、女はわかりましたと答える。
そんな二人を横目で見つめるひとりの男がいた。
『……………』
黒髪に程良く鍛え上げられた体。
動くことなく、感情を露わにすることもなく、ただじっとその光景を見つめていた。
『アナタ顔は可愛らしいんだから…この髪をもっと巻いてみるとか結ってみると、もっと可愛らしくなると思うの、アタシが言うんだから』
『そ、そうですか?』
じっ、と。
じっと。
『………………………』
『…なんか言いたいの?スルト』
『?』
視線に気付いたのか、もとから気づいていたのか。
青色の髪をした男は、スルトと呼ばれた男に問う。
『…もう夜中だ、静かにしろ』
『え、すいません…』
『アナタが静かすぎるんでしょう、アタシと名無しさんはお話していただけ、そんなに五月蝿かったとは思わなかったわ』
『五月蝿い五月蝿くないの問題じゃない、夜中は静かにするものだろう』
低く、スルトは言う。
青色の髪の男は特に気にしていなかったが名無しさんは身にピリピリと感じる威圧に体をふるわせていた。
『…………ちょっと、怖がってるじゃないの』
『えっ、あっ、ちがいます寒いだけで』
『……』
咄嗟に出た言葉がこれだ。
当然寒いわけなかった。
季節は夏なのだから。
スルトは目を少しだけ細めて、じっと見つめてくる。
彼がいつになく何故か怖く感じた。
今まで顔をまともに見たことがなかったからなのか、それともただスルトという男自体がこわいのか。
『名無しさん』
『は、はいっ!?』
突然名前を呼ばれ思わず声が裏返る。
そんな彼女を、青色の髪の男はクスクスと笑っている。
『……』
『な、なんです、か…』
『……』
『す、スルト、さん?』
答えない。
無言はきつい。
この場をどう凌ごうかと必至に考え始める名無しさん。
『………………座れ』
『へ?』
彼は自分の膝を指さしている。
すこし、訳がわからなかった。
『聞こえなかったのか、座れ、と言ったんだ』
『え、でも』
『なあに、そこ名無しさんの専用のイスにでもしちゃうの?』
彼の言葉を無視して、スルトはじっと見て訴えてくる。
名無しさんはビクビクしながら、ちょこん、とスルトの膝に座る。
『……………』
『…………』
お互い無言。
青色の髪の男は、頬杖をついて楽しそうに此方を眺めている。
『あ、あの、もういいですか』
『おりていい、とそんな許可をしたか』
『してないですけど!』
自分の膝に女を乗せたまま、淡々と話すスルト。
そんな状況になにも出来ずただ焦る名無しさん。