ディバインゲート
□とある恋愛事情
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青年は、緑の案山子に煎れてもらった茶の入ったコップを片手に思う。
魔法が凄いだとか、これを魅せて欲しいだとか、あれを出してほしいだとか、女のとりまきは言う。
皆所謂お洒落をしていて、髪を丁寧に巻いていたり化粧をしていたり、鼻につくような香水をつけていたり。
ときには、あなたの赤を考えながらメイクしてみました!
などと言ってきて、どうでも良いしくだらないと思いつつも、
素晴らしいです、お似合いです、可愛らしいですよ、と心にもない事を口にした。
それからと言うもの、勘違いをした女は私に好意があるのよと口論になったり終いには暴力による喧嘩が始まったりもした。
厄介な事になったな、と口の中で呟く。
『オズ?』
と、不意に背後からか細い声が聞こえた。オズと呼ばれた青年は振り向かずに、
『どうしました?名無しさん』
と声の主を呼ぶ。
『えへへ、隣いいかな?』
『構いませんよ』
隣に腰掛ける。
横目で、気づかれないように名無しさんを見た。
他の女とは違い、派手な髪型をしているわけでもなく派手な服を着ているわけでもなく、普通な、何処にでもいそうな女の子。
『……名無しさんはお化粧というものには興味が無いのですか?』
『似合わないから、私』
『そうですか?』
『それに、お化粧なんてしたらオズはきっと引いちゃうもの』
勝手な思い込みをされている。
たしかに、派手過ぎる化粧は似合わないと断言出来るほど彼女は童顔なのだが、薄い化粧なら似合うのではないか、と思った。
『今の女性は皆化粧に力を入れていますね。以前会った方なんて、驚くほど目の周りが黒くて…』
途中まで話して、止まる。
どうでもいい話題だ、と。
すると名無しさんは、いきなりオズに顔を近付ければじっと目元を見つめてきた。
『なんでしょう?』
『オズも、目の所…お化粧してる?』
『魔法です』
咄嗟に出たのがこの台詞。
ことあるごとに、なにか纏める時にはいつもこの台詞を口にしていた。
『かっこいいよね、それ』
『は、はぁ…』
別に褒めてもらう為に施しているわけでもない。
そのはずなのに、彼女に言われると少し嬉しく思えた。
『でもいいなぁ、あんなに可愛い人達って素敵な恋愛してるんでしょ』
と、俯きながら言う。
『そうでない方もいますが、なんですか、羨ましいのですか?』
『そ、そりゃあ、お年頃だから、羨ましくなったりするわよ』
『そうですか…ふむ』
と、ここで彼は考え込む。
しばらく、しばらく。