ディバインゲート
□彼は騙されると?
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『アンタって絶対オンナに怖がられるタイプだよな』
暑い夏。
片手に水の入ったペットボトルを持った金髪の長身の男は、パーシヴァルの前に立ちいきなり失礼な発言を浴びせてきた。
『……は?』
『だってさ、こんな赤い目だけでもコワいのに、それに加えて目つきも悪いしさ』
何度も顔を合わせて来て、ここまで己の顔に文句を言われたのは初めてだった。
パーシヴァルはどう返答していいのか分からず、自分の持っていた空になった空き缶を握り潰した。
『うわ、コワい顔』
へら、と笑う。
彼の名はランスロット。
三度の飯より三度のキスを好むとかなんとかで。
『人の顔に文句かよ』
『いいや、文句なんかじゃないけど……ほら、名無しさんがアンタの事コワいって』
『えっ』
顔が少しだけ引きつる。
まさか、と己に言い聞かせる。
これまで、普通に話して普通に接していた名無しさんが、まさか自分をこわいと思っていたなど。
『あー…、知らなかったのか』
『あいつは人にそんな事言えるような女じゃないだろ』
『それはそうだな。まあ、よかったんじゃないか?自分を怖いと思ってる奴がいるんだから、なんか発展とかしたりしてさ』
『…………そんなの、』
此処で言葉が止まる。
『?』
ランスロットは不思議そうな顔をする。それをパーシヴァルは無視して考える。
こわいと思われてるなら、今近付いた所で更にこわがられるだけではないか、と。
『………』
パーシヴァルは黙り込んでしまう。
それを見たランスロットは、軽くため息を吐くと
『なんか意外だわ、アンタの事だからこわくないんだぜーってアピールでもしにいくと思ってたのに』
『柄じゃない』
『ふーん…』
ここでランスロットがまた何かを言おうと口を開いた直後。
『らんすろっとー!!』
と、遠くから声がした。
小柄な少女が叫んでいたのだ。
『どうした、なんか無くしたのか?』
と言いながら叫ぶ少女の元へと歩いていく。
二、三歩歩いた所で足を止めると彼は首だけ振り向けてパーシヴァルを見た。
…全部ウソだけど。
と、口の中で呟いて。