女神の采配

□06
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Act.06











闇夜の暗がりを照らす 銀の光。

壮大な大空が広がる ハイラルに聳え立つ デスマウンテンに ゴロン族が住む ゴロンシティは ある。

目映い光の道筋を辿り、やっとの思いで ゴロンシティに たどり着いた リンク達一行は、最下層にある 固く閉じた扉の前に居た。



「あれー?おかしいな」

”ヘイッ!リンク、どうしたの?”

「扉、開かないんだよ」



リンクが懸命に 押している扉。

まだ小さな身体を 全身で使っても ピクリとも動かないその扉に リンクは溜息を 吐いた。



「だめだ。ビクともしない」



事の成り行きを 口を紡いで見守っていた エマロットが リンクよりも大袈裟な溜息を吐く。



『それは そうよ。
この扉は 王家が守っているものだもの。』



そう言いながら エマロットは、自身の括れた腰にある 獅子のフルートに手を伸ばした。



〜♪〜♪



心安らぐ 心地よい旋律。

オルゴールの調べでも 耳にしているかのような 高音のメロディーライン。

先日インパから教わった ゼルダの子守歌 だ。



「…っ!?」

”開いたッ!!”



今までどれほどの力を込めても ピクリとも動かなかった扉は、王家の使者を待っていましたと 言わんばかりに 軽々と口を開く。



『…以後は、この紋章を 瞳に焼き付けておくことね』



エマロットは その言葉だけを置き去りに、薄暗い通路を 進んで行く。



「…ま…待ってよ、エマ!」

”紋章…?”



エマロットの後を追うリンク

ナビィは 自身の光で輝く紋章の上を 一回り舞うと 急いでリンクとエマロットの後を追った。












―…。



暗闇の先にある 2つの灯。

風に揺れる 真紅の灯は、リンク達を誘うかの如く 闇に道しるべを残している。

灯の真ん中で 明らかに風格の違う 多人種が、腕を組みながら 現れたリンクとエマロット、そしてナビィへと 視線を向けた。



「なんだ!なんだ!なんだ!
王家の歌が聞こえたから どんな使者が来たのかと思えば、とんだ ガキンチョじゃねェか!」

「ガ…ガキンチョ?」

「おう、本当のこと言って 何が悪ィんだゴロ。

このダルニア様も 甘く見られたもんだゴロ!

もう 完全にヘソ曲げたゴロ!!

とっとと 帰れゴロ!!」

”チョ…、ちょっと…”



ダルニアと名乗った 多人種に 呆気に取られ、だんまりを決めていたリンクとエマロット。

ナビィがそんな2人の代わりに 言葉を繋ぐ。



「ナニ?なんで 機嫌悪いかって?」

「い…ぃや〜…そんな事、僕たちは 一言も…」



少し遠慮気味に 返答するリンクを差し置いて ダルニアは続ける。



「ドドンゴの洞窟における 古代生物の異常繁殖!
名産品 バクダン花の不作!
岩不足による 空腹!

だがな…コレはオレ達の問題だ!

ヨソ者の力なんか 借りねェゴロ!」



ダルニアは いかにもヘソを曲げたように ドカッと地面に 勢いよく座り込む。

地面から舞い上がる 砂埃は、灯に照らされ ダルニアとは正反対に 美しく舞い上がった。

両腕をさらに固く組み、顔をリンク達から背けるダルニアを後目に エマロットは リンクとナビィに耳打ちをする。



『…これ以上は 無意味ね。お暇しましょう』



エマロットの声に リンクとナビィは小さく首を 縦に振る。

その仕草を見た エマロットは、リンクとナビィと 同じように小さく、ダルニアに向けて 会釈をした。



『…失礼…致しました。』



…いつもより低い エマロットの声。

リンクは違和感を覚えて エマロットに視線を向ける。

エマロットは 拳をギュッと握りしめ 唇を嚙んだ。



「…エマ…?」



リンクの 自身を呼ぶ声に、はっと我に返る エマロット。



『……』



リンクの視線に気が付いたエマロットは 何事も無かったかのように 先を舞う一筋の光を追って行った。




















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