女神の采配

□05
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Act.05











『準備は 整った?』



ハイラル城の正門前で、インパと別れた リンクとナビィ。

城下町で 必要な物品を整え、エマロットが待つ ハイラル平原 へと たどり着いた。


時は 昼前。

凛とした 気持ちが良い程の 青空に、 片層雲が そよとの風に揺られ 次々と進路を 進めている。

頬を撫でる風は 柔らかく、暖かい。

まるでリンク達の 新たな旅路を 祝っているかのようだ。



「うん、もう大丈夫。
待たせて ごめんね、エマ…さん」

『エマで 良いって言ったでしょ。
何度も 言わせないで。』

「…ご、ごめん…」

"ちょっと、エマさん!"



エマ を、強調して 言うナビィに 何事かと エマロットは 表情を変えないまま 問い掛ける。



『何?、妖精さん。』

"ワタシには ナビィと言う名前があるのっ!

それに、これから 3人で旅することになるんだから その態度…。
もうちょっと どうにかならない?"



リンクの頭上に居るナビィに 視線だけを向けるエマロット。

何やら少し気まずい幸先に リンクはナビィとエマロットの狭間で 忙しそうに 視線を泳がせている。



『…馴れ合いは 苦手なの。
でも 確かにこのままじゃ、この美しいハイラルも 守れないわね…。

アタシが 悪かったわ、ごめんなさい。
元々、人と話すことに 慣れていないから…。
嫌味ったらしく 聞こえるでしょ?
気を付けるわ。』

"エーっと…何か、ワタシも…強く言い過ぎたみたい…ごめんなさい…"



二人の間で 忙しい視線を泳がしていたリンクも、ほっとしたように 胸を撫で下ろす。



「じゃ…じゃあ、改めて!
よろしく、エマ!」

『よろしく』

"…さっ、早速 行きましょうっ!"

「うん!…って、どこに 行けば良いんだっけ…?」

"もお〜、リンクてばっ!しっかりしなきゃっ!"



ナビィに叱咤されたリンクは 照れたような笑みを浮かべながら、頭を掻く。

そんなリンクとナビィに エマロットは ハイラル平原を 見下ろすように聳え立つ 遥かなる山へと 視線を向けた。



『次に目指すのは、あの山よ。』

「山?」







"えっと…あの山は…?"

『誇り高き民族、ゴロン族が居る デスマウンテン
あの山の麓に 師匠の出身地である カカリコ村がある。

そこで精霊石について 聞き込みをしましょう。』

「何か エマが居たら マップが用なしになるなあー」



頭の後ろで 両腕を抱えながら話すリンクに ナビィはまた、叱咤をいれる。



"もう、リンクー?あのねー"

「あー、はいはいっ!悪かったよ ナビィ。ちゃんとするからさ!」

『…そろそろ、向かうとしましょうか。カカリコ村へ』



そう言って エマロットは、紫の腰巻に まるで脇差のように構えていた 横笛を取り出す。



〜♪〜♪



エマロットが奏でた旋律は 以前に奏でていた曲とは また別の、ふしぎな力を持った旋律ー…。

風のように駆け抜ける高音とともに 地に響き渡るような低音を兼ね備えた そのメロディは、晴れ渡る快晴のハイラル平原に 響き渡る。

高い城壁から 反響してくるその旋律に リンクとナビィは 耳を傾けた。



"ふしぎな曲…"

「っ!あれはっ!」

"!?"



リンクが指差す方向を見るナビィ。

その姿を捕らえた リンクの手は、背後にあるコキリの剣へと 伸ばされる。

冷ややかな金属音と共に 鞘から抜かれたその剣は、暖かな日の光を反射して キラリ、と輝きを放った。







〈エマロット、久々だな〉

『ええ、レオン。ご無沙汰ね』

「しっ!しっ!…獅子が喋った!!」



慌てたリンクは 剣の矛先を レオンと呼ばれた獅子に向ける。

炎のように真っ赤な 鬣と尾。

ふわふわと風に靡く その鬣は、百獣の王と言う名に相応しいほどの 存在感を主張している。

まだ子どもで あることは見て取れるのたが、あまりにも立派なその姿に リンクとナビィも 開いた口を閉じることができない。



〈エマ…随分な奴と 組むことになったな〉

『彼はリンク。ほら、例の…。
森から来た 妖精の彼よ』

「エマ!こ…この獅子は…?」



リンクは 勇気を振り絞り、平然としているエマロットへと 疑問を投げ掛けた。



『…アタシの相棒のレオン。
これから共にするから よろしくね。』

「あ…相棒…?」

『ええ、相棒。君の妖精さんと 同じよ。
古から神獣と崇められる"神の使い"。

ゲルドの民なら 知らない人は居ないわ。

…それと、心配いらないわよ。
気性は荒いけど 君たちを攻撃するような 柔な精神は 持ち合わせて居ないから』

「へー…じゃ…じゃあ、」



リンクは安心したかのように コキリの剣を あるべき定位置へと戻す。

ナビィも 隠れていた、リンクの帽子から 覗くように顔を出した。



"ワ…ワタシはナビィ。"

〈ああ…レオンだ。
君は…頭が良さそうだな〉

"あ…ありがとう"



照れ笑いを浮かべるナビィを 見上げたリンクも、吊られて微笑む。



『それじゃ、進みましょう』



エマロットの足元を 一回りするレオン。
相当なついているのか、気持ちよさそうに 喉をゴロゴロと 鳴らしている。

そのまま背筋を伏せると、エマロットは レオンへと跨がった。



「あの…僕は…?」

〈甘ったれるな、小僧。オレはお前のような小僧を乗せる程 落ちぶれては いない。〉

「あ…はい、歩きます。」



先導するレオンとエマロットの後を リンクとナビィは 追い掛けていく。



"ねぇ、リンク"

「ん?どうしたの、ナビィ?」

"…ワタシ、やっぱり エマのこと 信用できないよ…。
なんか、リンクに手柄を 取られたくないみたい…"

「…仕方ないよ。僕も未熟なんだし。
色々、教わることも あるだろうしさ」

"ならいいけど…"

〈お前たち、ゆっくりしていたら 日が暮れて 魔物たちが あふれでてくるぞ〉

「…さ、ナビィ。急ごう!」



リンク達一向は デスマウンテンの麓にある カカリコ村を目指して 歩み始めた。





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