桜花乱舞。

□02
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大地を 撫でる風。

頬を伝う、涙。

冷ややかな雨音に 打たれながら、アタシは 空を見上げる。

...別に、悲しい涙じゃない。

ただ、嬉しいだけ。

大地の訴えに 耳を貸す、一人の勇者に 出会えたことが。





Maihime-02





「大地の女神、その力で大地を 創造せり

知恵の女神、その知恵で大地に恵みを与えん

勇気の女神、その勇気で大地に法を与えたり

風よ、吹け。

命を、灯せ。

花のように、咲き乱れ

花のように、舞い躍り

花のように、乱れ散れ

それが 大地 護る 術となる」



楽器を奏でる集団の唄い手、イリスが 語りを唄に乗せる。

...この唄に秘められた意を 分かる人なんて ただの一人も 居ないだろう。

その証拠に、誰一人として 足を止めることはない。

忙しく動き回る 人々の中で、アタシは 空を見上げた。



(...っ!?)



足を止める、青年。

金色の髪を 風に靡かせた、一見 牧童に見える その青年は 曇りなき空色の瞳を イリスへと向ける。



(貴方が...探し求めた、勇者なの...?)



喜びの涙が、頬を伝う。

その涙を隠すかのように 空からは 雫が降り注いだ。


両手で 頭を覆い、逃げるように 軒下へと入る青年。

アタシは 雨に打たれながらも、肌に張り付いた服を 気にも止めずに 立ち尽くす。



「アネモイ...アネモイ!」



イリスが 走り寄ってくる。



「何してるの、風邪引くよ?」



イリスは、懐から取り出した布を アタシの頭へと被せた。



「...アネモイ、貴女...
泣いてるの?」



アタシは 下を俯いて、首を振る。

ー...違う、違うの。

見つかったのよ、イリス。

イリスは、不思議そうに 首を傾げると、はっとした顔で アタシの手を握った。



「とりあえず、ね。こっち。」



イリスに手を引かれながら ハイラル城にある ホロロゲイオンへと 向かうアタシ。

目の前には、虹が架かっていて。

きっと、イリスの仕業かな。

なんて、心の中で 思っていた。

ー...時刻は 午後3時20分。


傾き掛ける太陽の光が 濡れた地面に落ちた 雫をきらきらと 照らしていた。
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