偽りの姫君

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ー…腹の底に響き渡る、低音の声。

身体中に染み渡る 音の地響きに、リンクとライアは 思わず 顔を覆った。



『………あれが…。』

「ああ。」










67:ヴァ・ッタ
ー a c t . 0 1 ー










「ー…これで、最後だ。」

『………うん』

「やっと、皆を解放してやれる」



雷獣山 山頂の最尖端。

そこに 突出してある 試しの岬に 到達した二人は、ハイラル全土を見渡せる眺望の中、下方から吹き乱れる 上昇気流に、自身の足元を 顧みた。

雨が一際 厳しく打ち付ける 東の貯水湖

試しの岬 下方には、神獣 ヴァ・ルッタが 現れた 広大な貯水湖が 広がっている。

試しの岬より 遥か下方にある為、風は穏やかで あるのだが、この長雨の元凶である ヴァ・ルッタが 存在している為なのか、身体を打ち付ける雨粒が 大きく、痛い。



「……東の貯水湖で待つ シドと合流するには、ここから 飛び込むのが 一番、手っ取り早そうだな」



リンクが足を一歩前に 踏み出せば、足元から こぼれ落ちる 小石が 見る見る内に 下方の貯水湖へと まっ逆さまに 落ちていく。

想像以上の高さに 固唾を呑んでいるリンクは、黙り込んだままのライアへと 視線を馳せた。



「……怖い?」

『………ううん、平気よ。ただ、思い出していたの。』

「…何を?」

『…この試しの岬の云われを、ね。』

「云われ?」

『ゾーラの民は、成人を迎える年に この試しの岬から 東の貯水湖へ 飛び込み、その勇気を示すんですって。無事に 飛び込めれば、立派な一人の成人と 認められるみたい』



ライアの話を聞いていた リンクは、ふーん、と 何か考え事をしながら 浮わついた返答を述べる。



「…ってことは。シドも、飛び込んだってこと?」

『…一族の王子ですもの。成人の儀式も 済ませているとは 思うけど…』



そう答える ライアに対し、間髪入れずに リンクは 言葉を被せた。



じゃあ、俺もやる

『………え?』

「どの道、行くっきゃ ねえだろ。ほら、手
貸して」



少し強引に、だけど優しく リンクは再びライアの手を取ると、先程同様 指を絡ませる。



『ちょっ、リンっ、ク!まだっ、心の準備が…!!』

「いくぞっ!」

『って、ちょっ、まっ……!てぇえええぇっ



ライアの静止も虚しく、リンクは試しの岬 先端から ライアを引き連れて 真下にある貯水湖へと 勢い良く 飛び込む。

重力に従い、落下していくその速度は ぐんぐんと早くなっていった。



『きゃぁあぁあっ!?』

「こっち、来い!」



落下途中、リンクはライアを 自身の方へ 引き寄せると、頭側から 水面に突入出来る様、姿勢を整える。

姿勢を整えた すぐ後。

大きな水飛沫が 東の貯水湖 水面に 跳び跳ねると、リンクとライアの姿は 水中へと 消えていった。





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