偽りの姫君

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32:ゴンシティ










デスマウンテン一帯の地図を 解放する為、当初 目的としていた オルディンの塔へと 到達した リンクとライア。

シーカータワーを 無事に起動し、目視できる 範囲にあった キュ・ラムヒの祠を 攻略し終え、ゴロンシティとの狭間にある 南採掘場を 訪れた。

昼下がりの灼熱の中、初めてまともに出会う ゴロン族の民は 忙々と 忙しなく 働き続けている。



「凄い暑さだな…。」

『ええ、流石は デスマウンテンの麓ね…』



燃えず薬を 飲んでいても、堪らない暑さに 額から流れる汗を 拭う。

ライアは 余りの暑さに 身体に蔓延る 熱を少しでも 逃がそうと 巡礼の服の胸元を持ち、
パタパタと 仰いだ。



「・・・」



ライアの仕草を 横目で見ていたリンクは、ライアと視線が合うと 咄嗟に顔を背ける。



『…なあに?、どうしたの…?』

「いや…別に、何も…」

『…?』



そのライアの仕草を 見て居た者が もう一人…。

南採掘場に居た 一人のハイリア人の男 であった。



「・・・」



先程の沈黙とは 明らかに違う視線を その男へと 送っているリンク。

ハイリア人の男は リンクの視線に気付くと 顔を真っ青にして 何事もなかったかのように 地面を這う ヒケシトカゲを 追い始めた。

その間にも ライアは ゴロンの民へ 情報収集の為に 話掛け、鉱石を懸命に叩いていた 小さなゴロン族と 会話を弾ませていた。



「ねえねえ、お姉さん達、観光ゴロ?」

『観光…と言う訳では ないのだけれど…。』



リンクとライアの出で立ちを まじまじと 交互に見つめる、ゴロン族の子供。

納得したように 1人で頷き、話を続ける。



「そうゴロか!ところで、なんでグレーダ兄ちゃんは いっつも 文句ばっかり 言ってるんだと 思う?」

『…え?』

グレーダ兄ちゃんは ボクの兄貴ゴロ。

どれだけ 大人に聞いても、皆に はぐらかされるんだゴロ…」

『そうなの…』

「お姉ちゃんは、何か知ってるゴロか?」

『それは〜…』



突然の質問に ライアは 困り顔を 浮かべた。

知らない相手のことを 聞かれても、何とも答えようがない。

しかし、子供の瞳は 真っ直ぐで 真剣そのものだ。



「…なあんだ、お姉ちゃんも 分からないゴロか」



ライアの仕草に、子供は肩を落とす。



『…ごめんね、貴方のお兄さんと 会ったことないから…』

「じゃ、しょうがないゴロね。」



自棄に聞き分けの良い所を見ると いつも、同じ返答を されているのだろう。



「あっ、そうだ…この先の 五合目ゴロンシティが あるけど…。

観光なら 今は行かない方が 身の為ゴロ」

「…それは、どういう 意味だ?」



話を聞いてくれたお礼、なのか。

この先の道中について 言及しだした 子供の言葉に リンクは 反応を示す。



「"何か"が 山で暴れてるんだゴロ。

本当は 客足が減っているから 来てくれるのは 大歓迎なんだけど…。

その "何か"のお陰で 火山弾が降り注いで 前より 危険が増してるんだゴロ…。

だから ボクたちの 好物の鉱石が 採れなくなったって…。

大人は皆、嘆いてるゴロ。」



子供の言う "何か"、とは きっと 厄災や神獣に 関係のあることに 違いない。

そう確信した リンクとライアは、互いに 頷き合った。



「…そうか。教えてくれて ありがとな」

「うん。向かうなら 気を付けてね」

『ありがとう』



2人は 南採掘場を 背に、火花散る
熱い 登山道を 再び登り始めた。






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