偽りの姫君

□14
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天頂に 日が差し掛かる頃…

日の光を遮るように 今までの青が嘘みたいに 薄暗く陰っていく。

一滴、また一滴、と 滴り始めた雨は 空から現れた光の滴を伴い 高台に聳え立つ始まりの塔へと 誘った。





14:コモロ

― 決 意 と 苦 悩  ―






「ライア、無事か!」



青い光の滴が 人の形へと 形成し、姿が現れる。

現れたその姿は 護るように ライアを腕に抱えた リンクの姿であった。



『リンク…ごめん、アタシ…』



リンクの腕の中で 困惑した表情を浮かべているライア…。

そんなライアを 力強く抱き締めると リンクは呟く。



「…良かった…怪我、なくて…」



暖かなリンクの腕の中…。

ライアも 応えるように、リンクの背へと 腕を回した。



『アタシ…怖くて…。あの時みたいに 助けられないんじゃないかって思ったら…』



…まだ、微かに。

リンクの背に回された ライアの腕が震えている。



「…今は 何も言わなくて良い…」



何かを察したリンクは ライアが落ち着けるように、そっと微笑む。

リンクの声を聞いたライアは 徐々に落ち着きを 取り戻していった。



−…



『ありがとう…もう、平気』



雨脚が更に強みを増した頃…。

ライアは リンクの腕の中から 少し、離れる。



「…そうか」



リンクの脳裏に 焼き付いて離れない、ライアの恐怖に戦く あの表情…。

“何があったのか”と聞いてしまえば また、ライアに辛い思いをさせてしまう…

リンクは ようやく落ち着きを取り戻し、立ち上がるライアに 何も聞けずに居た。



「…今日は 無理しないで、小屋で休むか?」



心配そうに問うリンクに ライアは首を横に振る。



『ごめんね、心配掛けて…。本当にもう、大丈夫だから…』

「…でも…」



ライアは 悔しそうに、拳を ぎゅっ、と握りしめる。



『これ以上、貴方の足を 引っ張りたくない…。

ここで立ち止まってしまったら あの時のアタシに 戻ってしまうわ…』



リンクとライアの間に しばしの沈黙が流れる。



『……アタシ、貴方と一緒に 歩みたいの…。

だから…お願い。』



いつものように ライアの太陽色の瞳に 力が戻る。

その瞳を見たリンクは 立ち上がると、大きく頷いた。



「でも、まずは…馬宿へ戻ることが先決、だな」

『ええ…あの子達を 迎えに行かないと、ね』



始まりの塔の淵に 2人は歩み寄る。

広大なハイラル平原へ向けて 飛び出すと パラセールとグライダーを 広げた。

下辺から巻き上がる 上昇気流に乗り、風に身を任せ 鳥のように ゆっくりと 大地へ滑空していく。

いつの間にか 雨は止み、雲の切れ間から 陽が覗いていた。





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