偽りの姫君

□07
1ページ/7ページ






「…明けたな」



リンクの声に うっすらとまだ遠退いている意識を 呼び戻す。

一晩中、火の守をしてくれていたのであろうか。

まだ重い瞼を開け、視線をリンクの方へ向けると、澄んだ深い青の瞳に 白んだ暁の空に揺蕩う雲が 反射して映り込んでいた。



『…火の守、してくれていたの?』

「ああ、大丈夫。体力だけは あるから。」



リンクはそう述べると、臀部を払い 立ち上がる。



「…行くか。」



ライアもリンクに続くように 身体を持ち上げると、錫杖を手に取り 広大な空に向けて 両の手を突き上げ、伸びをした。






07:カカコ村
ー イ ン パ を 訪 ね て  ー






道中、ヴァシ・リャコの祠で巡礼の儀と克服の証を入手し ハイリア川に掛かるモヨリ橋を渡って ノッケ川沿いに 双子山方面を目指す リンクとライア。

ノッケ川側方にある "双子山の塔"でシーカーストーンにマップ情報を入力すると、ハテール地方の一部分が、露となる。

シーカーストーンに 刻み込まれた情報を頼りに、再びノッケ川沿いを歩き、双子山を越え ふたご兄橋を越えると クロチェリー平原へと 到達した。

街道沿いにある ハユ・ダマの祠へも巡礼を終え、双子山馬宿へ立ち寄った2人を迎えてくれたのは 馬宿の門前に居る フッサレンと名乗る男であった。



「いらっしゃい!お客さんたち…旅の人ですか?」

「ああ、まあ…そんな所です…」

「二人連れの旅なんて 羨ましいですね!」

「いや、そんなんじゃ…」

「まあ、まあ。そんな照れなくても!ところでお客さん、歩いて旅を…?」

『ええ。今の所は、ですけど…』

「そら、さぞ大変でしょう!旅の人でしたら、馬の一頭ぐらい 御伴にお付けなされば 良いのに。」

「…馬?」

「ええ。ほら、あそこ」



フッサレン、と名乗った 馬飼いの男は、馬宿の軒先から 足を踏み出し、クロチェリー平原で 群れを成している 野生馬たちを示す。

リンクとライアも フッサレンが差す方に視線を向けた。



「野生ですので、手なづけるまでは 大変ですが、自分の馬を持つと 世界が変わりますよ!

 なんたって"野生馬手なづけ選手権2位"のこの私が言うんですから、間違いなしです!」

「…」『…』

「…なんですか、その引いた感じは!」



フッサレンの 余りに得意気な言葉に リンク達は 半ば呆れ気味に お互いの顔を合わせる。

そんな2人を見ていた フッサレンは、リンク達から 思っていたような反応が 無かったせいか、意気揚々と何かの決意を固めたように 続けた。



「…いいでしょう!

 疑うのであれば、この"野生馬手なづけ選手権2位"のフッサレンの記録に 挑戦してみますか?」

「…もちろん」

『ちょっと、リンク…』



フッサレンの 分かりやすい挑発に便乗してしまったリンクを 止めようと、ライアは静止の声を上げる。



「…だって、馬。必要だろ?」

『それは…居てくれた方が 良いとは思うけど…』

「それに、俺。馬は 得意なんだ」

『…得意?』

「ああ。何か、そんな気がする。」

『そんな気がするって…』

「とにかく!大丈夫だから。安心して そこで見てな」

「そうこなくっちゃ!」



リンクは軽く屈伸を行うと 先ほどのフッサレン同様、意気揚々と 身構えた。



「で、ルールは?」

「ルールは簡単!時間内に ここに野生馬を連れてくるだけです!この辺りはご覧の通り野生馬の宝庫。どんな馬でも 構いません。
 私の記録は2分!!2分以内に ここに野生馬を連れて来て下さい。」

「2分、だな。」

「それでは行きますよ!よ〜い、ドンッ!」



リンクは、フッサレンの言葉と同時に 野生馬が居る方角へと 走り出す。

ライアは フッサレンの元で 心配そうに、リンクの背中を 見送った。






.

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ