偽りの姫君

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準備を整える為、町の中を散策し始めた リンクとライア。

登山道で助けた ゲルド族の宝石商、ラメラと再会を果たし、魔物との戦いで入手した 鉱石を 買い取ってもらって ルピーを受け取ると 町入り口付近にある 防具屋・ガッチムッチへ 足を踏み入れる。

 リンクは耐火の石鎧耐火の石靴を、ライアは 鉱石・サファイアの加護が付いた 赤いオールインワンの防護服と 髪留めを購入し、炎ガードを付属させた装備を 入手することが出来た。



「まいど〜ゴロ」



各々、店内で耐火装備に着替え 外に出た2人は 安堵したように 大きく伸びをする。



『これで 炎のことは、心配なくなったわね』

「…あれ?」



上部で長い月光色の髪を 御団子様に 結い上げた、ライアの方へ リンクは 空色の瞳を 注視させる。



「この…」



リンクの視線の先には、ライアの うなじにある 何かの文様の痣へと 向けられていた。



『…が どうかした…?』

「…いや、前に見た時より 濃くなってる気がして…」

『…そう?、気のせいじゃない?』

「う〜ん…」



顎に指を当て、考えに浸るリンクの腕を 掴むと、屋敷の方角へと ライアは 引っ張る。



『それより、装備を 整えた後は 貴方を 導かないと、ね』

「…?」

『ほら、こっち』



ライアに引っ張られ リンクは ブルドーの屋敷の方へと 向かって行った。





*****





天に召します、我が主よ。安寧の世に 光明なる導きを 御示し下さい。



リンクの身体が 反発し合う 磁石のように、地面から離れ 宙へと浮かび上がる。

女神像が 神々しく輝く光に包まれると、その身体の周囲を 克服の証が 周回し始めた。

ブルドーの屋敷目前で 繰り広げられる 不思議な光景に、忙々と家路に就こうとしていた ゴロンの民は 吸い寄せられるように 集結している。



「「何だ、何が始まったんだゴロ?」」



騒然と湧き立つ 周囲の騒音を 気に留める様子もなく、ライアは 祈りの儀式へ 神経を集中させていく…。

 21個にも及ぶ リンクの鍛錬の成果、克服の証

その証は 5つが赤く、1つが緑に輝くと 再びリンクの中へと 吸い込まれていった。



『…どんな感じ?』



祈りの儀を終えたライアが 錫杖を降ろす。

飾り金具が 地面へと接地すると 風に揺れる 風鈴の如き音を 轟かせ、不思議と心が穏やかさに 包み込まれる。



「…凄い、今までと 比にならない程 力が湧いてくる…。」



掌を握り締め 湧き立つ力に 心底、驚きを隠せない様子のリンク…。

その様子を眺めていた観衆が 次々と 両の手を叩き合わせ、盛大な拍手と共に 歓声を上げた。



「凄い キレイだったゴロ!」

「光が集まって 漂って、〜…」



拍手喝采の中、様子を伺って居た一人のゴロン族が 輪を掻い潜り 2人の目前へと 現れる。

そのゴロン族に 話掛けられたライアは 砂埃を払うと ゆっくりと立ち上がった。



「君、凄かったゴロ!オレはフーゴー。君は 巡礼者ゴロか?…。」

『…貴方、巡礼者のことを ご存知で…?』

プロハン師匠に聞かされていた 昔話に出て来た人と そっくりゴロ。

まさか 本当に居るとは 思ってなかったけど…」

『…そう、貴方のお師匠様が…。』

プロハン師匠は 歴代の技を継承する 神聖な鍛冶職人ゴロ。

歴代から続く鍛冶職人の家系だから 色々な昔話を 知ってるんだゴロ!

そして 自分にも他人にも とっっっても 厳しい人ゴロ…。

かく言う俺も 修行と称し ゴロンシティ周辺のマグロックを 片づけるように 言われてるゴロが…ダルニア湖マグロックの所には どうしても たどり着けないゴロ…」

「…へー、ゴロン族でも たどり着けない程 道程が険しいのか…?」

「そうなんだゴロ…。そこで、巡礼者の君に お願いなんだゴロ!」

『…アタシ、に?』



ライアは己を指差し、首を傾げる。



「俺の代わりに ダルニア湖に居るマグロックの所へ 行ってみてほしいゴロ!」

『…それって、修行にならないんじゃ…』

「お願いゴロ!話によれば 巡礼者は あらゆる困難な道を 切り開く人でも あるんだゴロね…?

君みたいな 特別な力を持ってないと 難しいんだゴロ!!」

『…分かったわ。下見、してくれば 良いのね?』

「本当ゴロか?わっ、ありがとうゴロ!恩に切るゴロ!!」



いつの間にか 周囲の観衆は捌けており、その場に残されていたのは リンクとライア、そして 依頼を託したフーゴーのみと なっている。

フーゴーは お辞儀をすると、鍛冶屋の方へと 戻って行ってしまった。



「…いいのか、そんな安請負して。」

『もちろん、何も考えなしに 請け負った訳ではないわ。』

「…と、言うと?」

『…あの人の お師匠様、鍛冶職人でしょ?』

「…ああ。」

『鍛冶職人なら きっと、知っているわ。退魔の剣について…。』

「…!」

『それに 歴代続く一族、と言うのなら その他にも 色々な情報を持っているに 違いない。

何かしらの 恩を売るに 越したことはないって 判断したからよ』

「…なるほど、な。」



ライアは 口角を上げると 得意気に 述べる。



『目先の得より、先の得。これも戦術・人心把握の基本の内よ。

さ、準備も整ったことだし そろそろ 向かいましょう。北の廃坑へ』



一瞬の会話の内に 色々な情報を分析し 先の道を切り開いていくライアに リンクは 尊敬の念を 再び募らせる。

そして、自らの糧とできる様に その行動・言動を 記憶へ取り入れると ライアの隣へ並んで 北の廃坑に繋がる急登へと 差し掛かった。





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