偽りの姫君

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溶岩で出来た河川、ゴダイ川を 左手に見ながら 歩みを進める、リンクとライア。

道中、敵の砦を 1つ陥落させた後 やっとの思いで 無事に ゴロンシティの入り口がある デスマウンテン 五合目へと 辿り着いた。

前方、右方向に 聳え立つ デスマウンテンは、ハイラル一の明峰と 言われるだけあって 五合目と言えど まだまだ 山頂は 遥か遠くに ある。



「…っ、やっと、着いた…」

ゴロンシティは もうすぐ目の前…。

燃えず薬の効能が 効いている間に 到着出来て、良かったわ…』



リンクとライアは、ゴロンシティ入り口に掲げてある 看板を見て ほっ、と胸を撫で下ろした。



「…、これ、何の音だ…?」

『…音?』



リンクが "何か"の音を 感じ取り、耳を澄ませる。

リンクの言葉に ライアも 周囲を 見渡した。



『…何も 聞こえないけど。』



ライアの視界に 映るのは、先ほどと 変わらず、何の変哲もない 岩肌が剥き出しとなっている 登山道だけ。

しかし、リンクは 耳を霞める 微かに聞こえてくる声に 違和感を感じている。



" 〜 ・・・"



「…ほら、今も 聞こえた。」

『…確かに…何か 聞こえる気がするわ…』



その音の 正体を掴む為、2人は 意識を集中させる。

次第に大きくなっていく その音…。



「っ!?」『!?』



突如として 周囲に 鳴り響く 轟音…。

視界が揺らぐ程の 身体に鳴り響く 地鳴りが 2人を襲う。

あまりの激しい地鳴りに 堪えきれず、ライアは 体制を崩すと 地面へと 平伏した。

そんなライアを 庇うかのように、リンクは ライアの上へと 覆い被さる。



ー…ドンッ



「っ、」



大地の怒りを 現したかのような 衝撃音に、デスマウンテンの方を 見上げるリンク…。

その視界に 飛び込んで来たもの…。

それは 空に 投げ飛ばされた 憤石であった。



ライア!



リンクは 目前にある 岩影を 見つけると、ライアの腕を取り、その岩影に向かって 一目散に 掛けて行く。

迫り来る憤石に 命からがら 岩影に 逃げ込んだ リンクは、戸惑うライアを 腕の中に 抱き抱え、大地の怒りが 過ぎ去るのを待った。



「…どうにか、収まったみたいだな…」



憤石の火炎弾が 収まると、腕の中に抱き抱えていた ライアへと 視線を向ける。

少し背の高い リンクの方を見上げていた ライアは、視線が合うと 顔を背けながら 身体を仰け反らせた。



『…ええ、そうね。ありがとう、庇ってくれて…』

「…?、あ…あぁ…。」



よそよそしく 身体を離すライアに、少し戸惑いながらも リンクは ライアの無事を確認し 安堵の表情を浮かべている。

服の裾元に付いた 砂埃を払い除けた ライアは、まるで 神獣 ヴァ・メドーと 同様に、悲し気な鳴き声が 木霊する デスマウンテンの方へと 視線を移した。

その視線に連れて、リンクも ライアの視線の先へと 目を向ける…。



ー…



 空高く聳え立つ 明峰、デスマウンテン

剥き出しの岩肌に、燃え盛る炎の枝下が 火の粉を上げて 流れ出ている。

その溶岩は、留まるところを知らず 次々と 湯水のように 岩肌を伝い、流れていた。


…山肌の側面を 這うようにして 移動する、巨大な影。

怪しく灯る 赤き眼で、下界に聳える ハイラルを 見渡している。

影が 黄昏の日射しの中へ 姿を現すと、その全貌が 明らかとなった。


…長き尾を持ち、手足に炎を纏った 蜥蜴様の巨大生物。

重力に 導かれることもなく、自由自在に 山肌を 這い 移動する その生物は リンク達の視線に気付くこともなく 悶え苦しむような うめき声を 上げた。





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