偽りの姫君

□24
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「お待ちください、末裔さま、ライアさま!」



リトの村人達に 見送られ、広場を後にした2人は 次なる目的地である ヘブラ山脈へ旅立つ為、リトの村入り口前にある 雑木林の中道を 歩んでいる。

上空から 聞き覚えのある声が聞こえ、見上げると 風と共に舞い降りて来たのは 桃色の翼を持つ サキであった。



『あら、どうかされました…?』

「間に合って良かった…。どうしても ライア様に お渡し しておきたい物がございまして…」

『…アタシに?』



サキは 風に乱れた 羽根を整えると、懐から 小さな緑色の宝石を ライアへと手渡す。



『まあ、キレイな宝石…。これ、翡翠じゃないですか?』

「はい。主人と婚約する時に 母から 頂いた物なんです。

これを 貴女様に 預かって頂きたくて…」

『そんなに 大切な物…っ!』

「…この翡翠は 普通の翡翠じゃないんです。

" 繁栄の石 "と言われていて、あらゆる成功と繁栄を もたらしてくれると 言われています。

それに…」

『…?』

「この石を持っていると どこに居ても 持っている方の 想いが届くんです。」

「…想いが届くって…声が届くってことか?」

「どのような形で 届くかは 分かりません。

私はいつも 肌身離さず 持っていたから、経験したことがないんです…。

でも 主人が 貴女様を 唯一無二の戦友と認めた今、何か有事の時には これをお持ちに なっていらっしゃれば 何かお役に立てるかも、と思いまして…。

だから、どうか "預かって" 下さい。

そして、貴女方の目的が 終わったその時に…。

その手で お返しに 来て下さいね。」



サキは 優しい笑顔を ライアに向ける。

ライアは サキの魂胆を見抜くと、あまりの嬉しさに 言葉を詰まらせた。



「…また、無事に お会いできること。心より楽しみにしています。」

『…ありがと…サキさん』

「それと 末裔様にも 一つ伝言です。」

「…俺、ですか?」



リンクは 己を指差し、頭を傾げる。



「今度 会うその時まで "れんしゅう"を しておくから 約束、忘れないで!…と、チューリから。

本当は自分で伝えたかった みたいなんですけど、泣いてしまって 言えなかったみたいで…。」

「…チューリに 次に会ったその時には 稽古付けてやる、とお伝え 願えますか?」

「はい、必ず。」



リンクとライア、サキは 三人で笑い合う。

微笑ましい 和やかな一時とも、別れの時が 迫っている。


 見送るサキに手を振りながら…。

リンクとライアは ゆっくりと。

次なる旅路へと 歩み出した。





24:戦いのあとで ― リトの村 ―

風の神獣 ヴァ・メドー complete!



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