偽りの姫君

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透き通るような青に流れる 光を通した 白き雲

その空を 優雅に回遊している 神獣 ヴァ・メドーは 風の赴くまま その巨大な図体を 揺蕩わせている。

リンクは 広場から 上空を見上げ、優雅なメドーを 視線で追っていると 突如として 下方から つむじ風が 巻き上がった。

あまりの突風に 腕で顔を被う。

頬を撫でる風が止むと 巻き上がった風の方へと 顔を上げた。


神獣のように 優美に、自由に。

宙を舞う 彼の姿…。


彼は 広場の手すりへ 身を置くと、自身を見つている その蒼へと 腕を組み、得意気に 向き直った。



「どうだい 今の?

君には とても 真似できない 芸当だろ?」



挑発するかのように ほくそ笑む リトの英傑、リーバル…

唖然と立ち竦むリンクに 尚もリーバルは続ける。



「上昇気流を発生させ 空高く舞い上がる 僕の技…

空の支配者 リト族の中でも 芸術品とまで言われる テクニック

この技を似てすれば 厄災ガノンに対して 有利に戦いを 進められる事 間違いなしだよ」



リーバルは 止まっていた 手すりから、ピョン と 飛び降りると ジリジリと ゆっくり リンクへと 歩み寄った。



「そして一族でも 最高と称えられる 弓の使い手…

つまり この僕 リーバルこそ 厄災討伐の要に相応しい 戦士ってことさ

なのに…」



目前に 迫るリーバルの顔。

その表情は 嫉妬と憎しみに駆られ 険しいものと なっていた。



「僕に与えられた役目は 君の援護だ。

君がその 古臭い 退魔の剣の主って だけで!

愚の骨頂だよね…」

「…なっ!」



今まで口を紡いでいたリンクも 流石に堪忍袋の尾が切れる。

眉間にシワを寄せるリンクを 嘲笑うかのように リーバルは 微笑んだ。



「おや…?、怒ったのかい?」

「…別に、怒ってない。」

「…どうみても 機嫌が悪そうじゃないか。

納得いかないって 言うんなら 勝負と 行こう。

場所は…そうだな、あそこなんて どうだい?」



そう言って リーバルは 上空を回遊する メドーを差し示す。

広場上空を通り過ぎたメドーは 遥か天高くで 図体を旋回させ、優美な声を 上げている。



「あっ、ごめん、ごめん。君は1人じゃ あの神獣に 行くことさえ 出来ないんだっけね」



高飛車な笑い声を上げた リーバルは、メドーの元へ向かおうと 上昇気流を発生させ 天高くまで 舞い上がって行った。











「…末裔様、どうか なさいました…?」



我に返った リンクを見つめていたのは、先程まで 脳裏で顔を覗かせていた リトの英傑・リーバルではなく サキであった。

リンクは 静かに首を横に振る。



「いえ…大丈夫です。」

「そう…ですか…。

では、お手数をお掛けしますが 夫のこと、どうか よろしくお願い いたします。

くれぐれも 道中、お気をつけて」



リンクとライアは 丁重に頭を下げるサキに見送られながら、テバの家を 後にする。

螺旋状の階段を下り、リーバル広場へ寄り道すると リンクは 過去の自分と 同じように…。

天高く回遊する メドーを見上げる。


もう、あの頃のように リーバルが 下方から つむじ風を纏わせ、舞い上がることは ない。

どこか 寂し気な空模様を 瞳に映しながら…。

リンクは 拳を強く、握り締めていた。





18:リトの村 fin.





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