偽りの姫君

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「あのっ、すみません!」



いつもは冷静なライアが 少し歩調を荒げて 歩んでいるのを引き留める リト族の女性。

桃色の羽根を持つ、その女性に 声を掛けられたライアは 歩んでいた歩調を緩める。

追い付いたリンクが 膝に掌を当て、息を整えていると 桃色の羽根を持つ女性は ライアへと 話し掛けた。



「ごめんなさい…族長との会話が 聞こえてしまいました。

夫、テバと共に あのメドーを 退治して頂けるとか…」

『ええ、もちろんです』



桃色の羽根の女性は 申訳なさそうに ライアを見つめている。



「その…嫌な想いをさせてしまって ごめんなさい…。

あの人、本当は 悪い人では ないんです。

ただ少し、表現するのが 下手なだけで…」

『・・・』

「貴方方が 一緒に戦って下さるというのなら 心強いばかりです。

頑固者ですが 筋の通った戦士には 間違いありません。

失礼な応対をすることも あるとは 思いますが…。

夫のこと 許してあげて 下さい。」



…妻である この女性の頼み…。

ライアにも 理解できる節は 十二分にある。

きっと、テバという人物は 頑固者ではあるが その分 凄く優しい人なのであろう…。

そうでなければ 負傷した仲間の為に 怒って勇み足で向かうことなど するはずが あるまい。

…まるで、今のリンクのような そのテバと言う人物に ライアは 親近感を覚えていた。



『…そう言う人程、信頼できるわ。』

「…ありがとう」



ライアの返答に 女性は満面の笑みを浮かべる。

そして、小屋の端に居た 小さな白い男の子を 呼び寄せると 抱き抱えながら 続ける。



「申し遅れました。

私は サキ、と申しまして 戦士・テバの妻です。

この子は 息子のチューリ。

私にも 何かお手伝いできれば 良いのですが…。

私が協力できる事と言えば 夫の行き先を お教えする事くらいしか…」

「ぜひ、教えてください!」



息を整え終えたリンクは 威勢良く サキへと告げる。

サキは その答えが 読めていたかのように…。

小屋の中から見える 聳え立つ雪山の方を見て テバの行き先について 語り始めた。



「分かりました。

夫が向かったのは ヘブラ山脈の麓の リノス峠にある 飛行訓練場と 呼ばれる場所です。

そこはリトの戦士達が 空中戦の練習を する場所…

おそらく夫は メドーとの戦いに 万全を期すため 武器を調達しに 行ったのでしょう。

そういえば今回 夫は 歩いて飛行訓練場に 向かいました。

普段なら あの リーバル広場から 飛行訓練場へと 飛び立つのですが、今は 空高く飛ぶと あのメドーに 撃たれますからね…

リーバル広場は リトの英傑リーバル様から その名をいただいた 憩いの場。

あの忌まわしき日の事が 忘れ去られないように…」



リンクがリーバル広場と呼ばれた その方を向く。

沈黙したまま 小屋の角へと歩むリンク…

蒼い瞳を細め、視界を凝らすと ただただ 一点を見据えている。



『リン…ク…?』



ライアは そのリンクの様子に 何かに気付 き、口を紡いだ。

そして、ただ その背を…。

ライアは見つめていた。





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